更新日: 2023.05.02 その他老後

おひとりさまが認知症になったらどうする? 公的制度は何かないの?

おひとりさまが認知症になったらどうする? 公的制度は何かないの?
おひとりさまの老後の悩みの1つが、万が一認知症を発症したら、日常生活をどうやって送ればよいのかということではないでしょうか?
 
日本には、認知症高齢者が正常な判断ができないことで、不利益や不便を被ることがないようにサポートする公的な制度があります。
 
本記事では、その中から「成年後見制度」「日常生活自立支援事業」を取り上げて、制度の概要を紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

<成年後見制度>認知症でも安心して暮らせるように後見人がサポートする制度

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などで判断能力に不安がある人に対して、後見人と呼ばれるサポート役をつけて、契約や手続きなどの手助けをする制度です。
 
成年後見制度の利用により、財産が適切に管理できなくなる、入院などに必要な手続きができなくなる、よく分からないうちに不利益な契約を結んでしまう、といった問題の解決が期待できます。
 

成年後見制度の種類

成年後見制度は大きく「任意後見制度」と「法定後見制度」に分かれています。

■任意後見制度
認知症などにより判断能力が失われる前に、自分で後見人(任意後見人)を選び、判断能力に問題が生じたときに代わりにやってもらいたいことを、契約で決めておく制度です。
 
■法定後見制度
認知症などにより判断能力が失われた場合に、家庭裁判所によって成年後見人等が選任される制度です。成年後見人等には、親族のほか、法律や福祉の専門家などが選ばれます。

成年後見人等には「補助」「保佐」「後見」の3種類があり、判断能力の程度によって、いずれかが適用されます。
 

後見人の役割とできること・できないこと

任意後見制度で任意後見人ができるのは、預貯金や不動産などの財産管理、医療・介護関係、日常生活における契約や支払いなどのうち、任意後見契約に定められた範囲の手続きです。
 
法定後見制度では、「補助人」「保佐人」「後見人」ではできることが異なります。

・補助人:裁判所が定めた特定の法律行為の代理、民法第13条第1項の法律行為(借金、相続の承認・放棄、訴訟行為、新築・増改築など)の同意・取り消し、それ以外の家庭裁判所が審判した法律行為の同意と取り消し
 
・保佐人:家庭裁判所が審判した特定の法律行為の代理、民法第13条第1項の法律行為の一部の同意・取り消し
 
・後見人:財産に関する法律行為の代理、財産の管理、本人が行った法律行為の取り消し

任意後見人も法定後見制度の後見人等も、身体介護や日用品の購入、医療行為への同意、債務の保証、遺言作成、養子縁組などの行為はできないことに注意しましょう。
 

成年後見制度を利用する手続きと費用

成年後見制度の利用の手続きの流れとおおよその費用は以下のとおりです。
 
■任意後見制度

1.任意後見契約締結
2.任意後見監督人選任の申し立て
3.任意後見監督人の選任
4.任意後見契約の発効

任意後見制度を利用する場合、あらかじめ自身で選んだ人と任意後見契約を締結しておき、判断能力に不安が生じたタイミングで、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てを行います。任意後見人が選任されたら任意後見契約が発効し、契約内容に応じて後見人のサポートを受けられるようになります。
 
申し立ての際には、申立手数料800円と登記手数料1400円、連絡用の郵送費用が必要です。このほか、任意後見契約締結時にも、登記費用などがかかることがあります。
 
■法定後見制度

1.家庭裁判所に成年後見人等の選任申立
2.調査、鑑定など
3.後見等開始の審判・成年後見人等の選任
4.後見の開始

法定後見制度の場合は、家庭裁判所などに成年後見人等の選任を申し立てしたのち、事情の聞き取りや判断能力の鑑定などを経て、後見等の開始の審判および成年後見人等の選任が行われます。
 
申し立ての際には、申立手数料800円と登記手数料2600円、連絡用の郵送費用がかかります。また、鑑定が行われた場合は、10万円以下程度の鑑定料が必要です。 

<日常生活自立支援事業>認知症高齢者の福祉サービスの利用援助などを行う制度

認知症高齢者の自立した生活を支援する公的な制度として、都道府県・指定都市社会福祉協議会が主体となって実施している「日常生活自立支援事業」があります。
 
本支援事業は利用者との契約にもとづいて、福祉サービスの利用など、本人のみでは手続きが困難な日常生活のさまざまなことのサポートを行う制度です。
 
以下で、利用条件や援助の内容、利用手続きや費用について紹介します。
 

日常生活自立支援事業の対象者

日常生活自立支援事業の対象者は、次の両方に当てはまる人です。

・判断能力が不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで、日常生活上必要なサービスの利用に必要な情報の入手や理解、適切な判断や意思表示が本人のみでは困難な人)
 
・本事業の契約内容について判断できる能力がある認められる人

 

日常生活自立支援事業で受けられる援助の内容

日常生活自立支援事業で受けられる主な援助の内容は次のとおりです。

・福祉サービス・苦情解決制度の利用援助
・住宅の改造、住居の貸借、日常生活上の消費契約の援助
・住民票の届け出など行政手続きの援助

また、これらの援助にともなう、預貯金の払い戻し、解約、預け入れなどの日常生活費の管理、生活変化に気付くための定期的な訪問なども支援内容に含まれます。
 

日常生活自立支援事業を利用する手続きと利用料金

日常生活自立支援事業の利用手続きは次のとおりです。

1.自治体の社会福祉協議会等への相談
2.利用希望者の生活状況や希望する援助内容の確認・判断能力の判定
3.支援計画の策定
4.契約締結・支援開始

自治体の社会福祉協議会等は、利用希望者から日常生活自立支援事業の利用の相談を受けると、生活状況や希望の援助内容、事業に関して判断できる能力があるかどうかの確認を行います。利用希望者が利用条件に当てはまると判定された場合は、本人の意向に沿って具体的な支援計画を策定し、契約を締結します。
 
支援を利用する際には、自治体などが定める利用料(訪問1回あたり平均1200円)の負担が発生します。契約締結前の相談費用や生活保護受給世帯の利用料は無料です。
 

認知症が深刻な状態になる前に対策を検討することが大切

認知症を発症すると、日常生活で必要となるさまざまな判断や契約行為が、自分1人では行うことが難しくなります。そうなった場合の対策として、認知症が深刻な状況になる前に、自分自身で準備しておくと安心です。
 
特に任意後見制度や日常生活自立支援事業は、本人の判断能力が一定以上衰えてしまうと手続き自体ができなくなります。認知症発症後も安心しておひとりさま生活が送れるよう、早めに対策を採りましょう。
 

出典

厚生労働省 成年後見はやわかり ご本人・家族・地域のみなさまへ 成年後見制度とは
厚生労働省 成年後見はやわかり ご本人・家族・地域のみなさまへ 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
厚生労働省 成年後見はやわかり ご本人・家族・地域のみなさまへ 法定後見制度とは(手続の流れ、費用)
厚生労働省 日常生活自立支援事業
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー