定年後の地方移住で後悔をしてしまう人が後を絶たないのはなぜなのか。
配信日: 2023.05.04
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
安易な移住は後悔の原因になる
「自然豊かな場所で暮らしてみたい」といった理由や「メディアで移住のよさがいわれているから」など漠然とした理由での移住は後悔の原因になります。どんな地域であっても他の地域と比較して良い点と悪い点があります。
それを踏まえ、住み慣れた地域からの移住について後悔しないためには、移住をしたいという理由を明確にしておくべきです。移住理由が明確になっていないと、移住後に何か思っていたことと違う面があるとき、戻りたいと強く思ってしまい移住を後悔する原因になります。
地方移住をしても生活費が大きく下がるとは限らない
地方移住において見誤りがちな点のひとつに支出があります。田舎に行けば物価が安い、生活費が下がって定年後の限られた収入でも悠々自適に生活することが容易であると思って移住するのは危険です。
地域によっては生活費が都会とほとんど変わらないということもあります。参考までに総務省の家計調査によれば、東京都区部の消費支出は27万7332円なのに対し、金沢市で26万5122円、富山市は26万4279円、長野市では23万5092円など、都心部と大きく変わらない地域も多くあります。
また、地域によっては暖房にかかる費用や車の保有によって都会の暮らしにはなかった支出が増え、個別の事情によっては都会に住んでいる頃よりお金がかかることもあるでしょう。
環境の変化に適応するのが大変
都市部と地方とでは生活環境が大きく異なります。地方では都市部よりも近所付き合いが濃密であったり、徒歩圏内で生活を完結させたりすることが難しいなど都市部とは異なる環境であることも珍しくありません。公共交通機関が発達しておらず車が必須という地域もあります。また、夏は虫が多く、冬は雪が積もるなど自然環境も大きく異なることがあります。
長年都心で享受していた当たり前が移住によって当たり前でなくなるというのはよくある話です。定年して体が衰え価値観も固まってきているところに大きな環境変化が起こると、なかなかそこに適応ができず後悔してしまうのです。
定年後の移住によって後悔しないためには?
定年後の移住で後悔してしまわないようにするには、十分な調査と、実際に短期間でもそこで仮住まいしてみることが必要です。
調査をしてみて「ここなら大丈夫そう」と判断して移住したとしても、実際に住むと調査では見えなかった部分が見えてきます。移住によって後悔した理由としてよく挙がるのは支出の面と環境の面の違いなのですが、これらは実際に住んでみないと分からない部分も多いです。
都心に戻れるようにしておきながら地方移住を仮住まいで行うのは大きな負担を伴います。とはいえ、定年後の移住は老後の生活を決める大事な決断です。仮住まいせずにいきなり移住をすることはかなりリスクがある行為になります。
移住より住み慣れた土地に住み続けることも検討を
定年後の地方移住は老後の人生を左右する大きな決断です。地方移住してよかったという方もいる反面、後悔する方も後を絶ちません。定年後に地方移住をしてみたいと考えている方はもちろん、現在準備中という方も、実行に移す前に十分な検討と仮住まいをするようにしてください。
出典
e-Stat 家計調査 2 都市階級・地方・都道府県庁所在
執筆者:柘植輝
行政書士