更新日: 2023.05.06 介護

「老後に備える」特別養護老人ホーム(特養)の費用負担をくわしく解説

「老後に備える」特別養護老人ホーム(特養)の費用負担をくわしく解説
公的な介護施設の中心は特別養護老人ホーム(特養)ですが、入所待機期間の問題もあり、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や民間有料老人ホームを選択する人も多いようです。
 
今回は、特養の費用負担・入所者基準・待機人数などの最新の情報をもとに、特養についての状況を確認してみましょう。
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

公的介護施設としての特養の位置づけ

特別養護老人ホーム(特養)は、介護保険制度の均一的な運営を実現するため、各種の高齢者介護施設や高齢者向け居住施設の中核として、下記のような入所定員、施設運営体制、費用負担の公平性などを備えた施設です。

・入所者定員:65万人(2020年推計)
・施設運営:地域包括ケアシステムの中心(都道府県・政令市、中核市が指定監督)
・費用負担:約10.4万円~14.1万円/月が目安(入所時一時金が不要なうえ、収入・所得状況によりさらに軽減措置がある)

難点としては、入所待機期間が相当あることですが、一時期に比較して相当に改善されているようです。
 

介護施設利用者の状況(2018年)

特養の利用者数は、約65万人で全介護施設の利用者の約30%あり、最大の入所定員の施設です。
 

特養の入所待機数

特養の入居待機数は、2014年は52.1万人が2022年4月の調査では27.5万人に減っています。
 
入所待機数の減少の背景には、施設数がこの間に増えたことと、代替の施設であるサ高住や有料老人ホームも増設されて入所の受け皿になったことが挙げられます。また、過去の申し込みは複数施設への重複申し込みがあったされていますが、重複分を排除したことも入所待機が減った理由と思われます。
 
2022年の待機数を2021年の特養施設数1万502で割ると、1施設当たり26.2人となり、比較的待機期間は短くなったと想定されるのではないでしょうか。
 

費用負担のしくみ

特養の費用負担は、施設サービス費・居住費・食費・日常生活費に分かれています。
 
要介護5の人が「ユニット型個室」を利用した場合、1ヶ月あたりの費用負担は以下のようになります。
 


 
厚生労働省 「サービスにかかる利用料」に基づき筆者が作成
 
この中では、居住費(家賃相当)の金額が最大です。本来は施設サービス費の方が多額であると想定されますが、介護保険の本人負担分として計上されています。また、要介護5の人が「多床室」を利用した場合は、居住費と施設サービス費が少なくなり、合計で約10万4200円になります。
 

補足給付の段階

入所費用の中で金額ウエイトの高い居住費と食費について、収入に応じた軽減をはかるため、「補足給付」という制度があり、収入と預貯金額によって4段階が設定されています。
 
この段階区分によって、居住費、食費が減額され以下の表の通りとなります。
 
表の1~3は世帯全員が住民税非課税世帯の場合ですが、さらに収入額と預貯金額によって以下の表のように区分され「補足給付」が適用されます。
 


 
厚生労働省 「サービスにかかる利用料」に基づき筆者が作成
 
世帯全員が住民税非課税世帯の場合(1~3)は、収入段階に応じて相当額の補足給付(減額)が行われていることが分かります。生活保護世帯にも補足給付は適用されますが、実質的に本人が負担しないので除外しています。収入状況によっては、ユニット型個室でも個人負担額が7万円台~11万円台になる場合があるということです。
 
なお、2021年8月以降、補足給付の設定区分に収入だけでなく預貯金残が考慮されることになったことについては、十分に周知されてないケースもあり、改めて知っておくことが必要でしょう。
 

まとめ

特養の費用負担は、介護保険制度の中で運営されていますが、分かりづらい点が多いので、今回は収入と預貯金ランク別の「補足給付」を中心に説明しました。
 
民間の有料老人ホームと比較した場合、収入によって費用が軽減されます。入所待機も改善されつつあるようですので、介護サービスを考えるに当たって、特養も上手に利用されてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 サービスにかかる利用料
 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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