更新日: 2023.05.12 定年・退職

今年で「定年退職」ですが、住宅ローンが「800万円」残っています。退職金で返済すべきでしょうか?

執筆者 : 新川優香

今年で「定年退職」ですが、住宅ローンが「800万円」残っています。退職金で返済すべきでしょうか?
国土交通省の2021年度の調査によると、マイホームを購入する一次取得者の年齢は、30歳代が最も多くなっています。住宅ローンを組む場合は30年から35年で設定する場合がほとんどですが、仮に35歳で35年ローンを組むと、完済時の年齢が70歳です。
 
つまり、60歳で定年退職した場合、退職後も10年間はローンを返済し続けることになります。定年退職後は、現役時代に比べて収入が減っているため、老後破綻になりかねません。今回は、定年退職後の住宅ローンの平均残高と、5つの対処法を紹介します。
新川優香

執筆者:新川優香(あらかわ ゆうか)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

定年退職時の住宅ローンの平均残高はいくらなのか

金融広報中央委員会の調査によると、60歳代の平均住宅ローン残高は766万円でした。日本の企業は、60歳もしくは65歳に定年退職年齢を設定しているところが多いため、定年退職時の住宅ローン残高も同じくらいだと考えられます。
 
つまり、定年退職後に約800万円の返済をすることになります。しかし、老後の主な収入源は年金ですので、それだけで返済資金を捻出するのは難しいでしょう。
 

定年退職後の住宅ローンの対処方法

定年退職後の住宅ローンの対処方法は、次の5つです。

●退職金で住宅ローンを返済する
●定年退職後も働いて返済する
●住宅を売却する
●リースバックを利用する
●リバースモーゲージを利用する

それぞれ見ていきましょう。
 

退職金で住宅ローンを完済する

退職金で、住宅ローンを完済しようと考えている人もいるのではないでしょうか。退職金で住宅ローンが完済できれば、老後の生活に余裕が生まれます。しかし、会社の倒産やリストラが100%起こらないとは限りません。
 
また、予想より退職金が少なかった場合にも、住宅ローンの返済が難しくなります。定年退職後の主な収入源は年金のため、退職金で住宅ローンを完済しようとするよりも、病気やけがなどの万一の事態に備えて貯金しておくことをおすすめします。
 

定年退職後も働いて返済する

定年退職後も健康な場合は、収入を増やすために再雇用で働くのも1つの方法です。社会とのつながりを維持したい人にもおすすめです。
 
ただし、定年退職後の再雇用は、現役時代の給料と比べると減額される場合が多くなっています。また、健康であっても体力は落ちているため、働ける時間が短くなることも想定しておきましょう。
 

住宅を売却する

住宅を売却して得た資金で住宅ローンを完済し、賃貸物件などの新居に住み替える方法もあります。ただし、住宅の売却価格が住宅ローンよりも低い場合は、完済できないだけでなく住み替え費用も用意できないため、注意が必要です。また、住み慣れた住宅を手放すことになります。
 

リースバックを利用する

リースバックとは、現在住んでいる住宅を売却し、買い主からその住宅を借りて住み続ける方法のことです。リースバックで得た売却資金を、住宅ローンの返済にあてられます。ただし、売却価格が住宅ローン残高を上回っていないと、抵当権の抹消ができません。
 
抵当権とは、契約者が住宅ローンを返済できなかった場合に備えて、金融機関が購入する不動産に設定する権利のことです。この抵当権が抹消できなければ、リースバックの利用もできません。また、売却後に借りた場合の家賃がいくらになるのか、賃貸借期間はどのくらいかなどもあわせて確認が必要です。
 

リバースモーゲージを利用する

リバースモーゲージとは、住宅を担保にして、金融機関から借り入れができるローンのことです。契約者が死亡した後、金融機関が担保にしていた住宅を処分し、貸付金を回収します。
 
ただし、リバースモーゲージは、契約者が死亡した後の売却を前提にしているため、1人暮らしあるいは夫婦2人暮らしを条件にしている場合が多くなっています。相続人がいる場合は、住宅をもとにトラブルが起こる恐れもあるため、事前に同意を得ておきましょう。
 

自分に合った方法で老後破綻を防ぎましょう

定年退職後も住宅ローンの返済が続くと、ローン残高によっては老後破綻してしまいます。退職金で完済したとしても、その後の生活資金が枯渇してしまっては、万一の事態に対応できません。
 
そうならないためにも、今回紹介した退職金で完済する方法を含めた5つの対処法を参考に、自分に合った住宅ローンの返済について検討してみましょう。
 

出典

国土交通省 令和3年度 住宅市場動向調査報告書
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果
 
執筆者:新川優香
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

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