最近よく聞くリースバックって何?「老後資金問題」は本当に解決できる?

配信日: 2023.05.22

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最近よく聞くリースバックって何?「老後資金問題」は本当に解決できる?
テレビCMや新聞の折り込み広告、インターネット広告などで老後資金に悩む高齢者に向けて「リースバック」というサービスの宣伝がされています。
 
それを見て、本当にリースバックで老後資金問題が解決できるのか疑問に思った方から、相談を受けることが増えました。そこで、リースバックについてよくある疑問を解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

リースバックとは

国土交通省によれば、リースバックとは、「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」とされています。
 
具体的には、自分の持ち家を不動産業者に売却して現金を受け取り、その売却した家について、賃貸物件として毎月家賃を払いながら住み続けるようなシステムです。
 
その性質から、老後資金対策や老朽化した家の建て替えの際などに利用されています。売買と賃貸借契約の締結という2つの契約が実行されることで、リースバックには次のようなメリットが生じます。


・一括して大きな金額の現金を得られる
・固定資産税や修繕費の支払いが以後不要になる

逆にデメリットとしては下記のようなものが想定できます。


・家賃が毎月発生する
・トータルでは売却で得られた額を家賃が上回ることもある
・自宅が不動産会社所有となるのでリフォームなど設備変更が自由にできない
・あくまでも賃貸借契約に基づいて家に住めるにすぎないため、契約変更などがあると想定通り住み続けられるとは限らない

リースバックで老後資金の問題は解決できる?

リースバックで老後資金の問題が実際に解決できるかは微妙なところです。確かに一括して大きな額の現金を得られる可能性もありますが、結局は売買ですので、売却する不動産が良好な状態でないと大きな額の金額は得られません。
 
また、賃貸借契約を結ぶため家賃も発生します。それによって、長く住めば住むほど、売却によって得たお金に対して、家賃による支出割合が大きくなっていきます。このように、リースバックは持ち家という資産の活用方法のひとつに過ぎず、無から老後資金を生み出す魔法の制度ではないのです。
 
少なくとも、家の売却価格で何年分の家賃を払えるか考えたときに、生きている間に家賃が売却価格を上回ることが想定される場合は、老後資金問題が解決できるとは言えないでしょう。
 

リースバックはトラブルも少なくない

リースバックは不動産売買を伴うため、トラブルも少なくない取引です。実際、トラブルの多さゆえに国土交通省からは「住宅のリースバックに関するガイドブック」が発行されており、そこにはよくあるトラブルが列記されています。
 
具体的には、次のようなトラブルが比較的起こりやすいようです。


・家賃分の支払額によって、支出が短期間で売却価格を超えることになり、老後資金の確保とならなかった

・市場での取引価格より著しく低い価格で売却の契約をしてしまった

・賃貸借の条件が思っていたものと異なり途中で退去をすることになってしまった

・強引に結ばされた契約を後日解約しようとしたところ高額な違約金を請求された

こういったトラブルは、リースバックの仕組みを理解し、契約書や担当者の話を精査すれば避けられる問題ばかりです。契約の目的が達成できるかどうか、疑問点や懸念点を解消した上で利用すれば問題は起こりづらいでしょう。
 
いずれにせよ、広告のうたい文句や業者の説明だけで決めるのではなく、自身でしっかり考え、理解できない部分や不安な部分があれば思い切って契約しないという判断力が、不要なトラブルに巻き込まれないために必要なことです。
 

リースバックで老後資金を確保するなら多方面からの検討を

住宅は大切な財産です。リースバックで確保する老後資金は、住宅をお金に換えているにすぎません。よく分からないままに「老後資金を確保できるなら」と契約してしまうと思うような老後資金の確保とならず、後悔する原因にもなりかねません。
 
リースバックで老後資金を確保しようと思うのであれば十分に検討を重ね、少しでも疑問や不安が残れば契約をいったん見送るくらい慎重になるべきでしょう。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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