更新日: 2023.05.24 セカンドライフ

「老後は年金だけ」で暮らせるのは現役時代の年収がいくらの人?

執筆者 : 柘植輝

「老後は年金だけ」で暮らせるのは現役時代の年収がいくらの人?
老後は年金だけでゆっくり暮らしたい。そう思ったとしても、全ての人が老後年金だけで生活できるとは限りません。現役時代の収入によっては十分な年金が得られないこともあるのです。
 
そこで、老後を考える会社員に向け、現役時代どれくらいの収入があれば老後年金だけで生活できるのか考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

老後の生活費はどれくらいになるか

あくまでも統計上の平均値にはなりますが、総務省の家計調査報告によれば65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は月平均26万8508円となるようです。
 
【図表1】


 
出典:総務省 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年) 2総世帯及び単身世帯の家計収支
 
しかし、実際に年金などを含めた実収入は24万6000円程度であり、毎月2万2000円以上赤字となっています。年金などの社会保障給付のみに限れば4万円以上も不足することになります。つまり、老後夫婦で年金のみで暮らしていこうと思ったらおおよそ27万円の年金収入が必要ということになります。
 
【図表2】

 
出典:総務省 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年) 2総世帯及び単身世帯の家計収支
 
一方で、単身世帯に絞っていくと、月の平均支出は15万5495円となります。実収入は13万4915円となっており、毎月2万円程度の赤字が生じています。年金など社会保障給付のみで生活しようとすると、3万円近く不足するようです。単身者が年金だけで暮らしていこうと思ったら16万円近い金額の年金が必要になるということになります。
 
上記はあくまでも統計上の平均値です。実際には持ち家の有無や健康状態、ライフスタイルなどによって異なることになりますが、年金だけで生活していくことが簡単ではないということは確認できます。
 

年金だけで生活しようと持ったら現役時代の年収はいくらくらい必要?

では、会社員が将来年金だけで生活していくためには、現役時代どれくらいの収入が必要なのか考えていきましょう。
 
会社員で働く夫と、専業主婦ないし扶養内で働く妻という夫婦の場合、夫の年収が750万円程度あれば統計上、年金だけで生活していけると考えられます。
 
※厚生労働省の公的年金シミュレーターにて1980年5月1日生まれの方が23歳から65歳まで就労した場合で試算
 
夫の年金が月々20万円ほど、妻の国民年金が6万6000円程度と考えると、夫婦で26万円を超える年金収入が得られ、年金だけで生活できる可能性が高いでしょう。また、単身者の場合、年収500万円あれば将来受け取る年金は毎月16万円ほどとなり、年金だけで生活していくことができそうです。
 
※厚生労働省の公的年金シミュレーターにて1980年5月1日生まれの方が23歳から65歳まで就労した場合で試算
 

厚生年金の支給額は一時の収入だけでは決まらない

ここで確認しておきたいのが、上記の数字において、「現役時代の平均収入」が750万円または500万円必要だということです。
 
厚生年金の支給額は加入期間だけではなく、おおむねその間の平均給与に比例して決定されます。そのため、一時期だけ収入がよく750万円の年収があったものの、平均すると現役時代の年収は400万円程度であるというような場合、将来20万円もの年金を受け取ることができません。
 
例えば、23歳から55歳まで年収350万円で働いていた方が56歳から65歳まで年収750万円で働いたとしても、受け取る年金額は年間で180万円、月額でも15万円程度と夫婦で生活していけるだけの年金額を得ることができない計算になります。
 

年金だけで生活しようと思ったら現役時代の平均年収が500万円から750万円くらい必要

統計上のデータなどを基にした試算になりますが、将来年金だけで暮らそうと思ったら現役時代の平均年収が、単身者なら500万円、夫婦の場合では750万円くらい必要になりそうです。
 
総務省の家計調査からも、多くの世帯が年金だけでは生活できておらず、就労や貯蓄の切り崩しなどで生活していることが分かります。
 
老後は無理に年金だけで生活しようと考えるより、長く就労したりそれまでに資産形成をしたり、年金とあわせて生活していくことを考えていく方が現実的でしょう。
 

出典

総務省 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年) 2総世帯及び単身世帯の家計収支
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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