更新日: 2023.05.26 介護

家族信託と成年後見制度、高齢の親のために備えるならどちらがいい?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

家族信託と成年後見制度、高齢の親のために備えるならどちらがいい?
高齢の親の資産管理をするために、家族信託と成年後見制度のどちらを選択するべきか悩んでいる方は多いでしょう。本記事では、家族信託と成年後見制度の違いやどちらを選ぶべきか詳しく解説します。
 
家族信託と成年後見制度はどちらも財産管理の仕組みではあるものの、特徴が大きく異なります。現状に応じて適切な判断をするためにも、ぜひ参考にしてください。
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家族信託とは

家族信託とは、財産を持つ親が委託者および受益者となり、家族を受託者として指定する財産管理方法です。親に判断能力があるうちに家族に資産運用や管理を託すことで、認知症などの病気を発症しても財産を有効活用できます。
 
家族信託の主なメリットは、下記のとおりです。
 

●受託者の判断で財産の運用や売却ができる
●死亡時の相続だけでなく財産承継先の指定ができる
●信託報酬が発生しない

 
成年後見制度では被後見人の財産の増減ができませんが、家族信託では受託者の判断で資産の運用や売却が可能です。例えば、受託者の判断で不動産の貸し出しや売却ができます。
 

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害により判断能力が不十分な場合に、成年後見人が本人の意思を尊重しながら財産管理や契約行為の支援を行う制度です。
 
成年後見人制度の主なメリットは、下記のとおりです。
 

●家族や親族がいなくても利用できる
●認知症や障害などにより本人の判断能力が低下しても利用できる
●身上監護を受けられる

 
成年後見制度は、身上監護を受けられるところが特徴です。身上監護とは成年被後見人の健康や生活の状態に応じて、成年後見人が療養などに関する法律行為をすることを指します。例えば、施設の入退所契約や入院契約などが該当します。
 

家族信託と成年後見制度の違い

家族信託と成年後見人制度には、図表1のような違いがあります。
 
【図表1】
 

項目 家族信託 成年後見人制度
財産の権限 契約内で自由に設定 全財産
財産の管理方法 目的の範囲内で自由に設定 維持
期間 契約内で自由に設定 一生涯
運用費用 低い 高い
本人の判断能力がない場合の契約 不可 可能

 
家族信託は財産の権限や管理方法、期間をある程度自由に設定できますが、後見人制度は一度開始すると一生涯継続します。また、後見人制度では基本的に全財産を対象に権限が付与されるため、注意が必要です。
 

高齢の親のためには家族信託と成年後見制度のどちらを選ぶべき?

高齢の親のために現在持ち合わせている財産を整理する場合、家族信託と成年後見人制度を使うべきケースが異なります。
 
本項では、家族信託と成年後見人制度のそれぞれが向いているケースをご紹介します。現在置かれている状況に応じて適切なケースを考えてみてください。
 

家族信託が向いているケース

家族信託が向いているケースは、下記のとおりです。
 

●本人の意思を尊重しながら財産の管理を柔軟に行いたい場合
●死後の相続についても指定したい場合
●コストを抑えたい場合

 
家族信託は財産の管理が柔軟にできるため、積極的な資産運用や売却を視野に入れることが可能です。また、遺言でも指定できない2次相続や3次相続ができるので、財産承継について明確にしたい場合にも向いています。
 

成年後見制度が向いているケース

成年後見制度が向いているケースは、下記のとおりです。
 

●本人のサポートを優先したい場合
●将来のトラブルを避けたい場合
●専門的な知識がある人に身上監護を任せたい場合

 
成年後見制度は本人の判断能力が低下していても利用できるため、認知症や障害などがあり判断が難しい場合に向いています。また、家族信託によるトラブルを避けたい場合や専門的な知識がある人に対応を任せたい場合にも活用できるでしょう。
 

家族信託と成年後見制度は使い分けが必要

家族信託と成年後見制度はどちらも財産管理を支援する制度ですが、特徴やできることが異なります。両者のメリットを理解したうえで、現状や重視したいポイントに応じて使い分けることが大切です。
 
今回ご紹介した内容をもとに、現状と照らし合わせながら家族信託と成年後見制度のどちらを選択するべきか、もしくはどのように使い分けるべきか検討してみてください。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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