更新日: 2019.01.10 定年・退職

定年後の再雇用となると気になる【給料の減り】そんな時の味方「高年齢雇用継続給付」を知っていますか?

定年後の再雇用となると気になる【給料の減り】そんな時の味方「高年齢雇用継続給付」を知っていますか?
定年後再雇用となると、給料が減ってしまう人がほとんどだと思います。その時に頼りになるのが「高年齢雇用継続給付」です。
 
雇用保険は、失業した時にしか支給されないと思っている人が多いのですが、働いている場合でも支給を受けることができる場合があります。
 
そのうちの1つがこの「高年齢雇用継続給付」です。この給付の内容を少し見ていきましょう。
 
北山茂治

Text:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付は、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」とがあります。
 
「高年齢雇用継続基本給付金」は、雇用保険の基本手当(失業手当)等を受給せずに雇用を継続した人に支給されます。定年後再雇用の方々が対象です。
これに対して「高年齢再就職給付金」は、雇用保険の基本手当(失業手当)等を受給した後、再就職した人に支給されます。
 
今回は「高年齢雇用継続基本給付金」について見てみましょう。
 
この給付金は、5年以上雇用保険の被保険者であった人が、60歳以降も雇用保険の被保険者にとどまる場合に、65歳まで支給されます。かつ、賃金が60歳時点の賃金に比べて、75%未満に下がった場合の給付金です。
 
賃金の低下率が75%未満で、61%より高い場合は、60歳以降の賃金の0%から15%の間で支給されます。賃金の低下率が61%以下の場合は15%が支給されます。
例えば、60歳到達時の賃金が40万円で、60歳以降の賃金が20万円だった場合は、賃金の低下率が61%以下なので支給率は15%です。20万円×15%=3万円が支給されます。
 
ただし、60歳到達時の賃金月額が上限額の46万9500円を超えている場合は、高年齢継続給付が支給されません。
 
また、支給対象月の賃金の額(60歳以降の賃金)が支給限度額の35万7864円を超える場合も支給されませんので注意してください。(この支給限度額は毎年8月1日に変更されます。35万7864円はH29年8月1日から1年間の適用分です。)
 
支給対象月の賃金の額(60歳以降の賃金)と高年齢雇用継続給付として算定された額の合計が支給限度額を超える時は、「35万7864円-(支給対象月に支払われた賃金)」が支給額となります。
 

特別支給の老齢厚生年金との関係

高年齢雇用継続基本給付金を受給しながら、特別支給の老齢厚生年金を受給すると、標準報酬月額(賃金月額とほぼ同じ)の最大6%が削減されます。
 
「在職老齢年金で、すでに年金額が減額されているのに」と納得いかない方も多いかと思いますが、男性では昭和36年4月2日以降生まれの方・女性では昭和41年4月2日以降生まれの方は、65歳からしか老齢厚生年金を受け取ることができません。その方々に比べると、特別支給の老齢厚生年金を受給できる方はずいぶん優遇されています。
 

手続き

手続きは、定年後再雇用する方が勤めている会社を管轄するハローワークに申請することになりますが、通常は勤めている会社が手続きをしてくれます。
 
初回の手続きは「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」と「雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書」に、賃金台帳や出勤簿等の必要書類を添付して申請します。
 

税金

この給付金は税金がかかりません。これも魅力の1つですね。特別支給の老齢厚生年金には税金がかかりますので注意してください。
 

結び

平成30年6月1日に長澤運輸事件の最高裁判決がありました。長澤運輸事件とは、定年後に嘱託職員として継続雇用されたトラック運転手3名が、賃金を引き下げられたことを不合理として会社を提訴した事件です。原告らと無期の正社員との賃金格差が、労働契約法 20 条に違反し無効であると主張しました。
 
判決によると「その他の事情として定年後再雇用であることも考慮できる」とし、その上に「年金受給が予定されている」「定年退職にあたって退職金の支給を受けている」として、定年後再雇用者の賃金が低下することもある程度の部分で認められた内容になっています。
 
そうはいっても、退職後に住宅ローンが残っていることはざらですし、子供の教育資金がまだまだ必要な場合もあります。
 
このような状況では、今後この高年齢雇用継続給付がますます重要になってくると思われますね。
 
Text:北山茂治(きたやま しげはる)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート、高度年金・将来設計コンサルタント

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