今年「定年」を迎えた親と起業したいです。この場合に注意すべきことを教えて!

配信日: 2023.06.23

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今年「定年」を迎えた親と起業したいです。この場合に注意すべきことを教えて!
行政書士として会社設立に携わっていると、時折、子どもと定年後の親とで一緒に起業することについて相談されることもあります。定年後に親子で起業するとなると、どのような点に注意すべきなのでしょうか。定年後の親と会社を設立して起業することのリスクについて、金銭面から解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

老後資金を残しておくよう注意する

起業にはリスクが伴います。軌道に乗るまで収入がゼロとなる日が続くことも珍しくはありません。場合によっては、多額の負債を負うことになる可能性もあります。
 
筆者の経験上、親子で起業する場合、親が多めに起業資金を出すことが多いです。その場合、負債を負わずとも親の老後資金を事業によって減らしてしまい、その後の生活再建が大変になる可能性があります。
 
定年後の親と起業するのであれば、親はすでに老後の生活に突入していることを意識し、できる限り初期資金が少なくて済むなど、リスクの低い事業で起業すべきです。
 
特に、親が保有する不動産を担保に差し入れて、事業資金を借り入れてするような起業は、安易に行うべきではないでしょう。少なくとも親の年金収入と貯金などの資産をしっかりと計算し、可能であれば親の老後資金には手を付けない範囲で行える起業が理想です。
 

相続問題を回避できるようにしておくべき

定年後の年齢は、相続について考えていくべき年齢でもあります。ただでさえ複雑な相続問題ですが、起業して事業運営を行っていると、なおさらそれが複雑化します。
 
そのため、親との起業は会社の経営権や事業資金の借り入れなど、相続に関わるであろう諸問題も踏まえて事業経営をしなければなりません。例えば、株式会社を設立し、親が会社の株(=会社を所有する権利)を有している状態で相続が発生したとしましょう。
 
その株は、相続の対象となり、相続人間で分配するのですが、会社の業績や資産状況などによってはその株をめぐって相続争いが起こる可能性もあります。
 
また、親子起業によって親の資産が急激に増加していると、相続の発生時に予想以上に相続税が発生することもあります。
 
例えば、相続税は3000万円+法定相続人×600万円を超える部分にかかるのですが、事業に成功して親の資産が1億越えとなって、想定以上の相続税が発生し、相続税に頭を悩ませるということもあり得るのです。
 
逆に資産が目減りしていると、相続の発生時に他の相続人から「事業運営に見せかけた贈与があったのではないか」や「起業によって目減りしたのではないか」と疑われ、相続争いが起こる可能性もあるでしょう。
 
定年後の親と起業する際は、相続争いを避けるため、会社の所有権たる株は子が有するようにしたり、親は遺言書を作成して相続の内容について決めておいたりといったように、相続に関する諸問題を踏まえての起業が必要です。
 

在職老齢年金について注意する必要がある

親が定年して厚生年金を受け取っている場合、在職老齢年金の問題にかかる可能性もあります。在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働き、かつ、厚生年金を受け取る場合は、給与と年金の合計額が47万円を超えると、年金の全部または一部が支給停止される制度です。
 
親が厚生年金を受け取っている場合で、かつ、親が起業によって常勤役員になるなどで厚生年金の加入要件を満たす場合は、親の働く時間を短くしたり、親の給与の額を少なくしたりするなど、在職老齢年金に気を付ける必要があります。
 
だからといって親の給与を少なくしていると、それは不公平だと親子間で争いが起こる可能性もあるほか、相続時に他の相続人からその点を指摘され、相続争いの原因にもなりかねません。定年後の親と起業する際は、親の給与について在職老齢年金に注意した金額に設定する必要があるでしょう。
 

定年を迎えた親との起業は、「定年後」という点に注意すべき

定年を迎えた親はすでに老後の生活に入っています。その状況でする起業は、老後資金や年金、相続といった面から、通常の起業以上に注意しなければなりません。起業はリスクのある行為です。状況次第では、あえて親とは起業せず自分だけで起業すべき場合もあります。
 
定年後の親と起業するのであれば、自分たちだけで考えることはもちろん、そのうえで会社設立の専門家などに相談して決定することをおすすめします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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