更新日: 2023.07.21 その他老後
年金と収入が48万円を超えると、年金が「支給停止」に!? 平均年収でも支給停止になることもあるの?
そこで本記事では、年金を受給しながら働くときに厚生年金がどれほどカットされるのか、65歳以上の平均年収はいくらなのかを解説します。
執筆者:新川優香(あらかわ ゆうか)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
厚生年金は年金と収入の合計額が48万円超だとカットされる
会社員や公務員などが受給できる「老齢厚生年金」は、年金を受け取りながら働く場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が48万円以下の場合は老齢厚生年金の支給停止はありません。しかし、基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超えると、超過分の年金が受給できなくなります。
この制度は「在職老齢年金制度」とされ、老齢厚生年金を受け取りながら働く人が対象です。基本月額は1年間の老齢厚生年金の年額を12で割った金額を指します。例えば、老齢厚生年金を240万円もらえる場合、240万円÷12ヶ月=20万円です。
総報酬月額相当額は、簡単にいうと給与や賞与(収入)を指します。直近1年間の給与や賞与を足して、12で割った数が総報酬月額相当額です。例えば、給与20万円+賞与100万円の場合、12で割った10万円が総報酬月額相当額になります。
例えば、年金月額14万円、総報酬月額相当額40万円の場合は合計54万円になるため、48万円を超えます。支給停止額の計算式は、(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)×1/2です。
そのため、48万円を超えた場合は超過分の半分が老齢厚生年金からカットされます。この場合は54万円-48万円=6万円のため、6万円の半分の3万円がカットされ、本来受け取るはずの年金月額14万円から3万円がカットされた11万円が支給額です。
標準報酬月額相当額だけで48万円を超えた場合は全額支給停止となり、もらえなかった金額も将来受け取れるわけではありません。
65歳以降の年収は約300万円
先ほど老齢厚生年金は、年金と収入を合わせて48万円を超えた分は支給額が一部カットされるとお伝えしました。しかし、一般的に年金を受け取る年齢である65歳の年収はいくらなのでしょうか。
まず、2021年4月1日に高年齢者雇用安定法が改正されてからは、70歳までの高年齢者に対して雇用を確保するための努力義務が定められています。あくまでも努力義務ではありますが、70歳まで働きたい人にとっては働きやすい環境の整備が進んでいるといえるでしょう。
次に、65歳以上の平均年収を見ていきます。国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、60~64歳の平均給与が423万円、65~69歳の平均給与が338万円です。
また、厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年度の会社員や公務員などの厚生年金に加入している人の支給額は平均で月額14万5665円です(老齢基礎年金の額を含む)。
65~69歳の平均給与を単純に12ヶ月で割ると、338万円÷12ヶ月=約28万円になります。年金月額14万5000円に28万円を足すと42万5000円であり、48万円を超えていないため老齢厚生年金は全額支給されます。
そのため、老齢厚生年金の支給がカットされることはほとんどないと考えられますが、平均給与が34万円程度ある人は48万円を超える可能性があるため注意が必要です。
48万円を超過することは多くはないが気を付けよう
在職老齢年金は、働きながら年金を受給する場合に、一定の要件を満たしていると老齢厚生年金が減額される制度です。
65歳以上の平均年収から考えると収入と年金受給額の合計が48万円を超える可能性は低いですが、あくまでも目安のため気を付けなければなりません。年金をもらいながら働く人は、年金を満額受給できるよう、自分の給与と年金額を把握しましょう。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
厚生労働省年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:新川優香
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士