更新日: 2023.08.31 セカンドライフ

【定年後の年金】嘱託社員として再雇用された場合、どのような手続きが必要?

【定年後の年金】嘱託社員として再雇用された場合、どのような手続きが必要?
定年後に同じ会社で嘱託社員として再雇用された場合、年金関係の手続きは会社が行ってくれるのでしょうか? 確認してみましょう。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

定年後の再雇用とは

定年後の再雇用とは、これまで勤務していた会社を定年退職した後、再び同じ会社で新たな雇用契約を結んで働くことです。よくあるケースとして、定年退職後、嘱託社員として65歳まで1年ごとの契約更新とする有期雇用契約です。
 
定年後の再雇用は、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者雇用確保措置として高年齢者雇用安定法で定められています。会社は定年を迎えた従業員が働くことを希望すれば、従業員を65歳まで雇用し続けなければいけません。
 
さらに、2021年4月から施行された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)では、70歳までの就業機会の確保について、会社は多様な選択肢を講ずることが努力義務となりました。
 
60歳定年の会社で働くことを希望しない場合、公的年金の支給開始年齢が65歳からでは、定年後、年金と給与が発生しない無収入期間が発生しすると、その人の生活が困窮することが予想されるからです。
 
高年齢者雇用安定法では、次の措置を講ずるよう努めることとされています。
 

(1)70歳までの定年の引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
  b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

(出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」)

 
定年後の再雇用制度を利用した場合、これまで働いてきた会社で再雇用されて働くことが可能になりますが、一方、雇用契約によって今までと異なることもでてきます。
 

再雇用後の手続きについて

再雇用後の手続きについては雇用契約によって大きく変わってきます。特に年金は再雇用後、社会保険に加入するような働き方をするかによって、65歳から受け取る老齢年金額も大きく変わってきます。
 
社会保険というと医療(介護)と年金をあわせて考えるのが一般的ですが、60歳以上では異なる場合がでてきます。年金は厚生年金保険の加入は70歳になるまでが上限期間となっています。
 

【再雇用先で再度社会保険に加入する場合】

現在、適用拡大によって、会社の規模によりますが、再雇用で週20時間・月8万8000円・2ヶ月超雇用・学生でないという条件を満たすことで、社会保険(医療・年金)に加入できます。適用拡大に該当しない会社では週30時間以上の雇用契約で社会保険に加入できます。
 
従業員が60歳で定年退職し、継続雇用制度で嘱託社員として再雇用された場合、社会保険の資格をいったん喪失し、同じ日付で資格取得をすることで、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額になり、引き続き社会保険(医療・年金)の被保険者となることができます。
 
同じ日付で資格の喪失と取得を行うので、「同日得喪」と呼ぶことがあります。手続きには、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」と「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を事業所管轄の年金事務所です。手続きには、退職と再雇用が分かる書類の添付が必要になります。
 

書類の添付の例

1. 就業規則の写し(退職日の確認ができるもの)
2. 雇用契約書等の写し(再雇用されたことが分かるもの)

 

【社会保険に加入しない働き方をする場合】

週の就労時間が短く、社会保険に加入できない場合、医療保険は国民健康保険か退職した会社で任意継続被保険者になるなど、何かしらの医療保険に加入します。退職時に条件を満たす場合は、家族の勤め先で被扶養者になることもできます。
 
年金については、原則60歳までが国民年金の加入義務であるため、60歳以上は保険料の支払いはありません。ただし、これまでの国民年金の加入期間が480月(40年)なく、65歳時に満額の老齢基礎年金を受け取りたい場合は、国民年金に任意加入できます。任意加入は原則65歳もしくは480月(満額)になるまで加入できます。
 

年金の手続きは誰がするの?

前段のように、再雇用の働き方によって社会保険(厚生年金保険)に加入できるかどうかで変わってきます。社会保険に加入できるのであれば雇用先の会社が手続きをします。
 
社会保険に加入しない働き方をするのであれば、基本的に老齢年金の受給資格のある人は年金の加入は必要ありません。ただし、国民年金の任意加入する人は自身で加入手続きが必要です。近くの年金事務所もしくは役所で手続きをしましょう。
 
人生100年時代、公的年金は長生きリスクに備える保険として、大切な保険です。再雇用で働くのであれば、社会保険に加入する働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正〜70歳までの就業機会確保〜

 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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