退職金はどのくらいの税金が引かれますか? 2000万円支給された場合の「手取り額」はいくらぐらい?
配信日: 2023.09.10
本記事では、退職金を2000万円支給された場合を想定して、税金がどれくらいかかるのか、手取り額はどれくらいになるのかについて、解説をします。今後、退職金を受け取られる予定のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
退職金にかかる税金の計算
退職金には、所得税、復興特別所得税、住民税が課税されます。それぞれの計算式は、以下のとおりです。
【所得税の計算式】
所得税額 = 課税退職所得金額(※)× 所得税の税率 - 控除額
※ 「課税退職所得金額」の計算については後述します。
【復興特別所得税の計算式】
復興特別所得税額 = 基準所得税額(※)× 2.1%
※ 「基準所得税額」は、先述の「所得税額」と同じと考えて差し支えありません。
【住民税の計算式】
住民税額 = 課税退職所得金額(※)× 10%
※ 「課税退職所得金額」は所得税の計算式のものと同じです。
このようにしてみると、退職金にかかる税金の計算は、基本的には給与や賞与(給与所得)にかかる税金の計算と変わりません。
しかし、退職金は「所得税法上優遇されている」といわれています。その理由は、「課税退職所得金額」の計算の仕方にあります。
課税退職所得金額の計算式は、以下のとおりです。
課税退職所得金額 =(退職金額 - 退職所得控除額)× 1/2
なお、「退職所得控除額」は、表1に「勤続年数」を当てはめて計算します。勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算します。
【表1】
出典:国税庁 「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
例えば、勤続年数が31年6ヶ月で退職金が2000万円の場合、退職所得控除および課税退職所得金額は、以下のように求められます。勤続年数は1年未満の端数を切り上げ、32年として計算します。
1.退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(32年-20年)= 1640万円
2.課税退職所得金額:(2000万円 - 1640万円)× 1/2 = 180万円
すると、退職金2000万円に対して課税退職所得金額は180万円となります。このことから、退職金が所得税法上、優遇されているということがご理解いただけるかと思います。
退職金にかかる税金と手取り額の計算例
本記事では、退職金を2000万円支給された場合の税金や手取り額を試算します。このとき、もう1つ仮定しないといけない点が「勤続年数」です。勤続年数は退職所得控除額の計算に影響します。ここでは、前章で仮定した「31年6ヶ月」を採用します。
ここまでの設定や計算結果などを整理すると、以下のとおりです。
・退職金:2000万円
・勤続年数:31年6ヶ月
・退職所得控除:1640万円
・課税退職所得金額:180万円
退職所得については、他の所得と分離して課税する「分離課税」形式が採用されており、単独で税金の計算をします。
つまり、退職所得金額にかかる税金は、課税退職所得金額を、そのまま所得税・復興特別所得税・住民税の計算式に当てはめて計算していくことになります。計算結果は、以下のとおりです。
1.所得税額 = 180万円 × 5% = 9万円
2.復興特別所得税額 = 9万円 × 2.1% = 1890円
3.住民税額 = 180万円 × 10% = 18万円
なお、所得税額の計算については、表2に課税退職所得金額をあてはめて、税率・控除額を求めています。
【表2】
(国税庁 「退職金と税」より筆者作成)
また、手取り額を計算すると、以下のようになります。
手取り額 = 2000万円 -( 9万円 + 1890円 + 18万円)= 1972万8110円
まとめ
本記事では、退職金2000万円(勤続年数31年6ヶ月)支給された場合を想定して、税金や手取り額がどれくらいになるのかについて、解説をしました。計算結果は、以下のとおりです。
・所得税額:9万円
・復興特別所得税額:1890円
・住民税額:18万円
・手取り額:1972万8110円
退職金にかかる税金や手取り金額は、退職金額、勤続年数によって算出できます。今後、退職金を受け取られる予定のある方は、本記事を参考に、ご自身の退職金にかかる税金や手取り額がいくらになるのか、試算してみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 「退職金と税」
国税庁 「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
東京都主税局 「個人住民税」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー