更新日: 2023.09.11 定年・退職

「退職金」が2000万円あれば、夫婦2人働かずに年金だけで生活できますか?

執筆者 : 堀江佳久

「退職金」が2000万円あれば、夫婦2人働かずに年金だけで生活できますか?
長い間働いて、ようやく定年退職を迎え退職金を手にして、これから悠々自適の老後を過ごしたいと思う方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査(確報)」によると、男性の満勤勤続の平均退職金額は、大卒が2230万4000円、高卒が2017万6000円となっています。
 
本記事では、満勤勤続した男性のほぼ平均にあたる2000万円を退職金として手にした人が、年金だけで生活できるのかを検証してみたいと思います。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

夫婦2人でどれくらいの生活費が必要か?

(公財)生命保険文化センターが行った「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は月額で平均23万2000円とのことです。分布では「20~25万円未満」が27.5%と最も多く、続いて「30~40万円未満」が18.8%、「25~30万円未満」が14.4%となっています。
 
また、ゆとりある老後生活を送るための生活費としては、平均で37万9000円となっています。分布を見ると「30~35万円未満」が、20.5%と最も多く、続いて「50万円以上」が18.0%、「40~45万円未満」が11.3%となっています。
 
なお、ゆとりのための生活費には、最低日常生活費に上乗せする使い道としては、「旅行やレジャー」が最も高くなり、続いて「日常生活費の充実」「趣味や教養」があげられています。
 

年金のみで生活できるか?

夫婦2人(妻は専業主婦)で、夫が60歳で退職し、退職金を2000万円もらってフルリタイアし、65歳から年金を受け取ると仮定してシミュレーションをしてみます。
 

1.最低日常生活費の月額23万2000円の場合

(1)65歳時点での金融資産(年金を受け取るとき)

年間の生活費      23万2000円×12ヶ月=278万4000円
65歳までの生活費計   278万4000円×5年=1392万円
65歳時点の金融資産   2000万円-1392万円=608万円

となります。
 
次に、金融資産608万円と年金のみで、65歳以降生活していけるのかを確認してみます。
 
(2)年金のみで生活できるか?
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金の平均受給額は月額5万6479円、基礎年金を含めた老齢厚生年金の平均受給額は月額14万5665円です。妻が専業主婦として、老齢基礎年金の平均月額5万6479円を受給できるとして、夫婦2人で受給できる年金は、20万2144円としてシミュレーションしてみます。
 
この夫婦が平均的な年金を受給し、最低日常生活費で生活をするとした場合に、毎月2万9856円の赤字(=20万2144円-23万2000円)、年間で35万8272円の赤字となります。したがって、65歳時点の金融資産は、約17年(608万円÷35万8272円)でなくなります。このため、年金のみでは生活するのは困難であることが分かります。
 

2.ゆとりある老後生活を送るための生活費が37万9000円の場合

(1)65歳時点での金融資産(年金を受け取るとき)

年間の生活費      37万9000円×12ヶ月=454万8000円
65歳までの生活費計   454万8000円×5年=2274万円
65歳時点の金融資産   2000万円-2274万円=▲274万円

となります。
 
したがって、フルリタイアして、ゆとりある老後を送ってしまうと、年金を受給する前に、金融資産がゼロになってしまいます。
 
上記は、あくまで、調査結果にもとづいた平均額からシミュレーションをしているので、個別に見た場合は必ずしもこのような結果になるとはかぎりません。例えば、日常生活費を抑えて平均以下にすれば、資産寿命が延びます。あるいは、年金の受給額が平均以上にもらえる人もいるでしょうし、貯金もそれなりにある人もいると思います。
 
また、老後の楽しみや旅行、そして子どもや孫への小遣いもあげたい人もいるでしょうし、病気やけがなどもある程度想定しておく必要があります。加えて、最後は老人ホームで暮らしたいとなるとその分の費用もかかります。
 
したがって、自分たちがどれくらいの生活費がかかるのか、そして将来もらえる年金額がいくらなのか、貯金はいくらあるのかなどをしっかり把握し、どういう老後を過ごしたいのかを想定しながら、老後のライフプランを立てる必要があります。
 

出典

厚生労働省 中央労働委員会 令和3年賃金事情等総合調査(確報)[調査結果の概要]
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
厚生労働省 年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和4年12月)
 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

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