シングル女性の老後プラン ~マンションを購入する前に検討したいこと~
配信日: 2023.09.29
購入を考えるときに予算はどのように決めたらよいのか、物件を決める際は何に気を付けるのかなど、物件探しを始める前に必ず検討しておきたいことを解説します。
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
知人からのアドバイス……でもよく考えてみて!
【今回のご相談】
A子さんは45歳のシングル女性。
ずっと賃貸で家賃を払い続けていくなら、住宅ローンを借りてマンションを購入しようかと考えていたところ、知人から「家賃と同じ金額で毎月の返済ができる住宅ローンを組めば返済していけるし、35年の住宅ローンを組めば、月々の返済額が少なくなるから、思ったより多く借りられるよ」とアドバイスを受けました。
でも、80歳まで返済することを考えると、そんなにたくさん借りて大丈夫なのか、と心配になって相談にいらっしゃいました。
知人からのアドバイスは正しいように思えるかもしれませんが、ちょっと考えてみましょう。マンションを購入すると、固定資産税や管理費・修繕積立金、火災保険料などの住宅費がかかります。ですから、家計に余裕があって住宅費を増やせるなら良いのですが、そうでなければ住宅費の支出で家計が苦しくなる可能性があります。
また、住宅ローンの返済期間をできるだけ長くすれば、月々の返済額は減ります。その結果、思うより多い額のローンを借りることができるでしょう。
でも、借りられるのと無理なく返済できるのは別の話です。多くの場合、高齢になれば収入は年金だけになります。それからも住宅ローン返済を続けながら生活していけるでしょうか。
住宅ローンの返済期間は、できれば退職までに完済できる年数か、もしくは今後の給料アップや退職金で繰上げ返済できることを期待して、プラス5年程度にしておくのがお勧めです。
最初に予算を決めよう
住宅購入を検討するときは、無理なく返済できる住宅ローン借入額を考え、購入予算を決めることから始めましょう。A子さんは45歳で、現在の家賃は8万円、できれば住宅費を増やしたくないということでした。マンション購入するなら固定資産税と管理費・修繕積立金も見込んでおかなければなりません。
したがって、無理のない住宅ローン返済額として月6万円、ローン返済期間20~25年という条件から借りられる金額を逆算します。金利にもよりますが、借りられるのは1500~1800万円くらいになるでしょう。
貯蓄がどのくらいあるかも確認しましょう。その中から住宅購入に充てられる金額はどのくらいでしょう。頭金は必ずしも用意する必要がありませんが、住宅ローン手数料や登記費用、引っ越し費用など、住宅購入時にかかる費用は貯蓄から支出することをお勧めします。諸費用の目安ですが、一般に新築マンションなら購入価格の5%、中古なら8%くらいを考えておくとよいでしょう。
A子さんは、貯蓄から200万円を頭金として出し、1800万円の住宅ローンを借りる予定で、2000万円くらいの中古マンションを探すことにしました。リフォームが必要となることも想定し、諸費用は多めに200万円を見積もります。この購入資金プランなら、住宅ローンを返済しながら趣味を楽しむ余裕もあり、老後資金を貯蓄していけそうです。
物件選びで気をつけたいこと
物件選びの際は、今住みたい家を探すことはもちろんのこと、老後の生活も想像しながら慎重に検討しましょう。今は毎日出勤しているので、日当たりや周囲の環境はあまり気にならないかもしれませんが、毎日家で生活するようになれば、感じ方が変わるかもしれません。
今の生活より老後が大事ということではありませんが、いつかは老後がやってくることも考えておかなければなりません。マンションのある自治体の介護サービスも調べてみるとよいでしょう。
中古マンションを検討するなら、築年数も重要です。40代なら30年は生活することを考えて物件を選びましょう。例えば、築30年だと30年後には築60年になります。マンションも50年を超えると大きなリフォームが必要になる可能性があります。
また将来、老人ホーム入居を考えるなら、売却して入居資金に充てる選択肢も考えておきたいものです。30年後も買い手がみつかりそうかどうかも、物件探しの条件となるでしょう。
ただし、もしもコンパクトマンションを選択するなら、「住宅ローン控除」など、税金の優遇制度の面積基準を満たせないことがあります。ちょっとした面積の差で数十万円の優遇制度のメリットを得られなくなるとしたら残念です。購入希望の物件がどのような優遇制度の対象となるのかも確認しておきましょう。
物件選びの際に気をつけてほしいことを挙げましたが、まずはどのような部屋に住んで、どのような生活をしたいのかをイメージして、自分の考えを整理することが大切です。予算の制約があるので、すべての希望をみたすのは難しいかもしれませんが、何を優先したいのか、そのために何を我慢できるのか整理しながら、新しい住まい探しをしていきましょう。
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者