更新日: 2023.09.29 介護
年老いた父親がけがをした! 遠方に暮らす親の介護、どうすれば良い?
日々の生活に忙殺される中、「あなたのお父さんがけがをされました」という電話を突然受けた場合、どう対応すればよいでしょうか。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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優先すべきことを洗い出す
親はいつまでたっても、わが子のことを「子ども」と思いがち。迷惑をかけたくないという思い、住み慣れた環境を変えたくない、などという気持ちから、「心配しなくていい」「大丈夫だから」「このままでいい」などと言ってしまうかもしれません。
しかし、どんな人でも加齢によって心身の機能が衰えることを免れることはできません。親の気持ちを尊重したいという気持ちもあるでしょうが、ひとり暮らしゆえの事故が起きる可能性を常に気にかけているだけでなく、遠方に住んでいれば、いざというときにも簡単に駆けつけることが難しいということは明らかです。
感情に流されず、「やらなければならないことを粛々とすすめる」ことが、後の混乱を回避できます。
先送りすれば問題は深刻化するばかり
遠方に暮らす親の介護において優先すべきことは、終の棲家になるかもしれない「施設入所」について検討することです。親が「今は大丈夫」と言っていたとしても、加齢による心身の衰えを考えれば今より回復することはないと認識すべきです。
仮に認知症の症状が加われば、事態はさらに深刻化します。頻繁に救急車を呼ぶことになったり、警察の世話になる機会が増えたり、という可能性があることを覚悟しなければなりません。
図表1
今後ますます、介護をする側の負担は増える傾向にありますから、問題を先送りにする前に早めに支援を求められる途を冷静に探しましょう。
施設入所の話は必ず拒否するもの
施設入所というと、育ててもらった親の介護を放棄するような後ろめたさを感じる方もいるかもしれません。また親の立場からすれば、自分から計画的に入所先を検討していないと、入所自体を拒否してしまうというケースもあるでしょう。
では、私たち子ども世代が、最期までしっかり親を介護できるのでしょうか? 親の介護をするということは、自分たちの今の生活の大半を組み替えなければなりません。
また、パートナーや子どもに大きな犠牲を強いる可能性があり、生活の破綻もありうるでしょう。最期まで親の介護をするということは、簡単に実現できる問題ではないのです。
中途半端な在宅介護よりもしっかりとした入所先検討と定期的な訪問
大抵の仕事は経験を重ねるにつれ、段取り力がつき、作業効率がアップするものです。育児ならば、要領よくできるようになるうえに世話をする子どもが成長し、自分でできることが増えていきます。
これに対して介護は、効率化よりも負担増のスピードのほうが圧倒的に早いです。感情に流されてすべてを引き受けようとせず、「けがをした」などという機会を「本格的に入所先を検討する時が来た」ととらえ、一緒にどういった施設に入所希望か、費用はどうなるか、などを考えてみてはいかがでしょうか。
もちろん、入所後の定期的な訪問と状況確認は必須となりますので、生活スタイルの変化について、家族としっかり話し合っておくことをおすすめします。
出典
厚生労働省 国民生活基礎調査
厚生労働省 平成22年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ介護の状況
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者