更新日: 2023.10.10 その他老後
「老後2000万円問題」はやっぱり本当なのでしょうか? その根拠と内訳が知りたい!
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「老後2000万円」という指摘の根拠
老後2000万円問題は「老後30年間で約2000万円が不足する」という内容のもので、令和元年に金融庁の「金融審議会 市場ワーキング・グループ」がまとめた報告書が根拠となっています。
その報告書では、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯をモデルケースとしており、毎月の実収入が20万9198円、実支出が26万3718円となることから、毎月約5万5000円の赤字が発生すると算出しています。内訳は以下の通りです。
勤め先収入:4232円
事業収入:4045円
公的年金:19万1880円
その他収入:9041円
食料:6万4444円
住居:1万3656円
光熱・水道:1万9267円
家具・家事用品:9405円
被服及び履物:6497円
保健医療:1万5512円
交通・通信:2万7576円
教育:15円
教養娯楽:2万5077円
その他の消費支出:5万4028円
非消費支出(社会保険など):2万8240円
実収入には公的年金も含まれているため、公的年金に頼らず赤字分を蓄そなえておく必要があるといえます。
定年退職後の生活を30年間と仮定した場合、この赤字分の貯蓄額は5万5000円×12ヶ月×30年で約2000万円が不足するという結論となるのです。
モデルケースと実生活との違い
では、実生活はこのモデルケースにあてはまるのでしょうか。総務省の家計調査(2022年)によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦一組のみの世帯)では実収入が24万6034円、実支出が27万1889円となり、赤字分は毎月2万5000円ほどとなります。モデルケースよりも赤字が少なくなりますが、これは全員にひとしくあてはまるものではありません。
例えば、公的年金の支給額はこれまでの働き方によって金額が大きく異なります。家計調査では21万7876円となっていますが、これよりも少ない給付となる人もいるでしょう。
また、最近の物価上昇ラッシュで、これまでよりも支出が多くなっている世帯がほとんどです。何も工夫せず同じ生活を続けていては、やがて貯蓄が尽きてしまい、生活に苦しむ可能性もあります。
高齢者世帯と一概(いちがい)にいっても、さまざまな家族の形があるので、「自分たちの場合はどうか」という視点で考えていくことが大切です。
老後の生活で意識したいポイント
老後の生活を送るうえで意識したいポイントは3つです。
働けるうちは働く
定年退職したあとも、働けるうちは働くことをおすすめします。今では定年退職の年齢が65歳まで延びている企業もありますが、その後、再雇用やシルバー人材枠を扱っている企業で働くことが望ましいでしょう。
総務省の家計調査(2022年)でも、勤労者世帯は実支出を実収入が上回っています。公的年金以外のまとまった収入を得ることで、生活にゆとりを持てるでしょう。
コツコツと節約を続ける
前述したとおり、最近の物価上昇ラッシュによって、支出が多くなっている世帯がほとんどです。収入が限られている高齢者世帯では、これまでと同じ生活をしていると、いつか貯蓄を取りくずしきってしまう可能性も考えられます。これまで働いていた時間を、野菜の自家栽培を行ってみたり、衣服を手作りするなど、日々の生活の中でコツコツと節約を続けましょう。
資産運用でお金に働いてもらう
これまで労働して稼いだお金に、今度は働いてもらいましょう。短期間で大きな上昇を狙うのではなく、長期間でゆっくり増やすことを意識してください。5年以上の期間で考えられるとよいでしょう。あまり大きなリスクはとらず、「預貯金で置いておくよりは増やせる」ことを意識した運用がおすすめです。
仮に500万円を年率2%で複利運用すれば、5年後には552万円ほどまで増やせます。「2倍になる」などの大きな増え幅ではありませんが、5年間、ただ預貯金に置いておくよりも安心して増やせるでしょう。しばらく使わない貯蓄は、リスクをおさえた投資先での運用を行なってみてください。
まとめ
今回は、「老後2000万円問題」の根拠と内訳について解説しました。2000万円という金額にとらわれず、個々の家庭事情に合わせて貯蓄していきましょう。また、老後生活を迎えた後も、紹介した意識したいことを参考に行動してみてください。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(p10・p16)
厚生労働省 企業年金・個人年金制度の現状等について
総務省 家計調査 第9表 (高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別(実収入・実支出参照)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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