更新日: 2023.10.17 介護

家族が認知症になるといくらかかる?

執筆者 : 植田英三郎

家族が認知症になるといくらかかる?
昨今では、政府が認知症の人や家族から意見を聞く会議を発足させるなど、認知症をめぐる議論が高まっています。認知症は、以前からさまざまな視点での意見が出されていますが、ここでは個人の家計において、認知症にかかる費用の観点から認知症を解説します。
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

認知症(有病者)の人数と将来推計

厚生労働省によると、認知症患者の人数は表1のようになっており、将来の有病者数についても以下のように推計されています。
 
表1
 
表1
 
※厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について より筆者作成
 

認知症になった場合にかかる費用

認知症になると、さまざまな費用がかかることになります。表2は、厚生労働省が採用している、慶応義塾大学が公表した資料に基づく費用一覧です。費用は「医療費」「介護費」「インフォーマルケアコスト」の3つに区分されています。直接費用としては、「医療費」、「介護費(在宅と施設)」があります。
 
表2
 
表2
 
※慶応義塾大学医学部 認知症の社会的費用を推計 より筆者作成
 
表2によると、医療費1割負担・在宅介護の場合は年間約27万円(医療費5万円+介護費22万円)、3割負担の場合は80万円(医療費14万円+66万円)の費用がかかることになっています。
 
これら直接費用の他に、「インフォーマルケアコスト」があります。インフォーマルケアコストとは、認知症患者の家族(就労中)が介護のため就労を中断したときの損失収入を費用と見たものです。金額は年間382万円(表3)とされています。
 
表3
 
表3
 
※慶応義塾大学医学部 認知症の社会的費用を推計 より筆者作成
 
したがって、インフォーマルケアコストが発生した場合は、認知症にかかる年間の費用は、在宅介護の場合は年間409万円(27万円+382万円)~462万円(80万円+382万円)になります。
 

認知症にならないために

家族が認知症になると、インフォーマルケアコストを含めた総費用は、年間500万円を超える場合も想定されます。このような出費が、10年~20年以上続く場合もあるので、予防も含めた対応が必要になってきます。これに関して、厚生労働省は「共生」と「予防」を重視しています。
 

・「共生」とは

地方自治体等の行政(認知症初期集中支援チームなど)、専門医療機関、認知症支援民間サポーターの支援を受けながら、発症した認知症者をケアするしくみのことです。
 
認知症のレベルに応じた適時・適切な医療・介護サービス等の提供を受けるためには、早期診断を含めた対応が大事です。
 
特に、介護による就労中断を避けるためには、行政参加の認知症初期集中支援チームなどとよく相談することが大切です。
 

・「予防」とは

認知症予防としては、公的な制度を利用する「介護予防」のさまざまなメニューや取り組みが推進されています(表4)。
 
表4
 
表4
 
※厚生労働省 介護予防について より引用
これらの活動は認知症の時期を遅らせると共に、「共生」の際に大きな支えとなるでしょう。
 

まとめ

家族や自身が認知症になった際にかかる費用について、公表されているデータをまとめました。状況は個々人で異なりますので、目安として参考にしてみてください。
 

出典

厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について  4P

慶応義塾大学医学部 認知症の社会的費用を推計

厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について(参考資料) 11P

厚生労働省 介護予防について     11P

 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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