更新日: 2023.10.31 介護

認知症の親を介護施設に入れたいです… 費用は実家を売ればまかなえそうでしょうか?

認知症の親を介護施設に入れたいです… 費用は実家を売ればまかなえそうでしょうか?
親が認知症になり、介護施設の入所などでまとまった資金が必要になった場合、親本人の預貯金や不動産などの資産を使おうと考えている人は多いでしょう。しかし、親が認知症の場合は実家の売却ができない、預貯金が下ろせないなどの問題が発生することがあります。
 
本記事では「親の介護施設入居費用を実家売却でまかなえるか」について、主に親が認知症を発症したときのリスクを中心にまとめました。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

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サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

親の介護施設入所費用は「親の資産」からと考える人が多い

家族信託サービスを提供する株式会社ファミトラ(東京都港区)が2023年9月に、40~60代の親がご存命の方406名を対象に実施した「介護施設とお金に関する調査」を公表しました。
 
調査によると、親の介護施設入居の費用に誰のお金を使うかという問いに対して、最も多い回答は「親の預貯金、金融資産、年金から支払い、足りなければ自分が負担」で、全体の55.4%を占めていました。
 
次に多い「親の預貯金、金融資産、年金から支払い、足りなければ親の家を売却する」の30.5%と合わせると、85.9%の人が親の介護施設入所費用の原資は親の資産からと考える人が多いという結果です。
 
「親自身の介護費用なのだからまずは親の資産から」という考えは当然のものではあるでしょう。しかし、実際に介護施設の入所費用が必要になったときに備えて十分に準備をしていない場合、予定していた親の資産を使えず困ってしまうケースもあるため注意が必要です。
 

親が認知症の場合は実家を売却できない可能性がある

親が認知症になり意思能力がないとみなされる状態になると、契約などの法律行為ができなくなります。実家の名義が親本人の場合は、不動産売買にともなう契約もできなくなるため、いざ施設入居の費用を捻出するために実家を売却しようとしても、できない可能性があるのです。
 
認知症になっても本人の意思能力があるうちは問題ありませんが、不動産売却時に契約者本人が認知症などで意思能力がないと判断されると、売買契約が無効となります。また、預貯金口座が凍結され、現金も動かせなくなると考えましょう。
 

意思能力のない親の不動産を売却するには成年後見制度の利用が必要

認知症になり意思能力が喪失したとみなされる親の不動産を売却するには、法定後見制度の利用が必要です。
 
法定後見制度とは、認知症などの理由で財産管理などにまつわる法律行為を、自分一人で判断能力が欠く状況となった場合に、家庭裁判所の審判により成年後見人を選任し、財産管理や本人の保護を行う制度です。
 
成年後見人等(保佐人、補助人も含む)には本人の代わりに財産を管理処分する権利があるため、成年後見人を立てることで認知症になった親の不動産の売却が可能となります。※自宅を売却する場合には家庭裁判所の許可が必要です。
 

親が認知症になる前に資産活用の対策をしておこう

親が認知症になる前に対策をしておくことで、法定後見制度に頼らなくても柔軟に資産を活用できるようになります。例えば、次のような方法が考えられます。
 
■家族信託
資産を家族などの信頼できる人に託し、目的(老後資金・介護資金の管理など)に従って管理・処分を任せる仕組みです。本人が認知症などで資産管理できなくなったあとも、家族によって財産が柔軟に管理できるようになります。
 
■任意後見制度
本人の意思能力があるうちに、任意後見契約を公正証書により締結しておき、意思能力が失われたあとで契約を発効させる法定後見制度の仕組みです。自分で選んだ人を後見人にできることや、後見契約の内容を自分の意思で決めておけるメリットがあります。
 
親に万が一のことがあったときに備えて、親が元気なうちに資産の状況を共有し、対策に早めに取りかかりましょう。
 

入所費用の負担を抑えられる介護施設を選ぶのもあり

親が所有する実家は築年数が古いことも多く、売却価格が期待よりも低い可能性があります。自宅の売却価格次第では、特に入所費用が高額な民間介護施設への入所を希望する場合、難しい場合もあるでしょう。
 
資金が少ない場合は、比較的費用負担を抑えられる次のような公的施設を選択肢にする方法もあります。
 

●特別養護老人ホーム
●介護老人保健施設
●介護医療院

 
親や家族の資金状況、自宅がいくらで売れるかなどに応じて、予算に合った介護施設を選択しましょう。
 

親が認知症で実家の売却ができないケースに要注意

親の介護施設の入所費用は、公的施設を選択するなどの工夫をすれば、少ない費用でもまかなえる可能性があります。注意しなければならないのは、親が認知症を発症して、不動産の売却が難しくなったり、親の預貯金を自由に引き出せなくなったりするケースです。
 
予定していた親の資金が自由に使えないとなると、家族が費用を立て替えるほかありません。そうなってから慌てることがないように、親が元気なうちに認知症になったときに備えて、財産や相続、医療や介護施設の希望などについて確認をするなど、対策を講じておきましょう。
 

出典

株式会社ファミトラ 介護施設とお金に関する調査

厚生労働省 ご本人・家族・地域のみなさまへ(成年後見制度とは)

厚生労働省 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)

厚生労働省 どんなサービスがあるの? – 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

厚生労働省 どんなサービスがあるの? – 介護老人保健施設(老健)

厚生労働省 どんなサービスがあるの? – 介護医療院

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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