更新日: 2023.11.06 セカンドライフ

高齢の親に運転免許証の自主返納を勧めたい……話し合いのコツを教えて!

執筆者 : 田久保誠

高齢の親に運転免許証の自主返納を勧めたい……話し合いのコツを教えて!
親が高齢になると、車の運転に不安を感じることがあるでしょう。もし事故を起こしたら……と子どもや孫の立場からすれば、免許証の自主返納をしてほしいと思うかもしれません。
 
しかし、地方ではマイカーが必須な地域が多いですし、「年寄り扱いしないで!」と親の気分を害して、より意固地にさせて自主返納への道を閉じてしまうケースもあるでしょう。どのように話し合いを持てば良いでしょうか?
 
例えば、車の維持費や保険料などの固定費を見てみたり、自主返納をすると受けられるさまざまなサービスや特典について調べてみたりすることも選択肢になります。感情面からでなく、お金の面からも親の説得材料になるかもしれませんよ。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

運転免許証はどれくらいの人が保有しているの? 高齢者の保有はどれくらい?

令和3年の警視庁の統計によると、運転免許証の保有者数は約8200万人弱で、そのほとんどが自動車の運転免許証を保有しています。
 
高齢者にフォーカスして保有人数と全保有者に対する割合を見ると、表1のようになります。
 
表1

表1

 

運転免許証の自主返納とは、どれくらいの人が返納しているの?

まず、運転免許証の自主返納とは、平成9年の道路交通法の改正によって導入され、翌平成10年から施行された制度で、運転免許が不要になった方、運転に不安を感じるようになった高齢ドライバーの方が、運転免許証の全部もしくは一部を自主的に返納できる制度です。
 
前述のとおり、返納制度が始まったのが平成10年(1998年)でした。その際に返納した人数は全国で2596人でした。その後、運転経歴証明書が導入された平成14年(2002年)でもまだ8073人でした。
 
その後は順調に伸びていき、平成29年には40万人を突破しました。その後東京都の池袋で起きた11人が死傷した事故が起こった令和元年(2019年)には、過去最高の60万人を突破しました。
 

どのようなときに運転に不安を感じるようになるの?

どうしても加齢とともに体には変化が出てきます。例を挙げると、記憶力や判断力の低下、筋力や視力の衰え、反射神経の鈍化などがあります。
 
そのため、以前のような運転ができなくなり、若い頃にはなかった運転中の操作ミスが増えてくるでしょう。「運転免許証を取得後、一度も事故を起こしたことがない」「どんな時でも安全運転を続けてきた」という優良ドライバーであっても、これから先も安全運転が続けられるということではありません。
 
ご家族もですが、本人も運転しているときどのような場面で不安を感じるのか具体的な例を挙げると、ウインカーの出し忘れや間違い、他の車やバイク、歩行者、障害物に注意が向かない、車庫入れ等で塀や壁をこすることが増えたなどがあります。これ以外にも雨天時や降雪時特有の不安もあるかと思います。
 

自主返納ができるのはどのような人? どうやってやるの?

自主返納は、有効な運転免許証を持っている方であれば誰でもできます。ただし、一定の条件(免許停止など)の場合は申請できません。また一部の窓口では、本人ではなく代理人による申請手続きも可能です。
 
運転経歴証明書の申請ができるのは、運転免許証を自主返納した方と運転免許証を更新しないで失効した方です。しかし、自主返納後や免許失効後5年以上が経過している場合や免許取消になった方等は申請できません。
 
申請をする場所、申請書類、受付時間、手数料、要件などの詳細については、運転免許センターなどに問い合わせてみましょう。
 
ただし、自主返納したことにより運転免許が取り消されると、再度免許を取得する際に、運転免許試験の一部免除などの特例は適応されません。適性試験、学科試験および技能試験を受験し、合格する必要がありますので注意が必要です。
 

車を運転すること・しないことのメリットとデメリットを考えて

車があれば思い立ったときにどこにでも行ける、重い荷物を持たずに移動できるなど、さまざまなメリットがあります。また、公共交通機関が少ない地方では、車は生活必需品でもありますね。
 
ただし、車を保有するには税金やガソリン代、そして多くの場合は駐車場代等がかかり、それは都心部であるほど高額になります。
 
また万が一事故を起こしてしまったら、被害者はもちろん、ご自身の精神的・経済的負担だけでなくご自身の家族にも迷惑が掛かるかもしれません。このようなデメリットの部分を例に挙げて、親と話し合ってみるのも選択肢の1つです。
 
また自治体によっては、免許返納をすることによりさまざまな特典が受けられることもあります。スーパーの配達料金の割引、タクシー料金の割引など、親が暮らす地域の情報を調べてみるとよいでしょう。
 
もし、高齢の親の運転に少しでも不安を感じるようなら、事故を起こす前に免許の自主返納を勧めてみてはいかがでしょうか。
 

出典

警視庁 運転免許統計 令和3年版
警察庁 運転免許証の自主返納について
政府広報オンライン 運転が不安になってきたシニアドライバーやそのご家族へ運転免許証の「自主返納」について考えてみませんか?
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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