更新日: 2023.11.16 定年・退職

もうすぐ定年。収入が大幅に減ったら使える「高年齢雇用継続基本給付金」とは? 自分ももらえる?

執筆者 : 堀江佳久

もうすぐ定年。収入が大幅に減ったら使える「高年齢雇用継続基本給付金」とは? 自分ももらえる?
定年後再雇用されると、約9割の人の年収が下がるというデータがあります(出典:パーソル総合研究所 「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査(2021年)」)。
 
どれくらい下がるかというと、50%程度下がった人が22.5%、50%より下がった人が27.6%となっており、再雇用者のうち約5割の人は年収が半分になるという現実があります。
 
このように、年収が大幅に減った再雇用者は、条件を満たせば「高年齢雇用継続基本給付金」を受給できます。本記事では、「高年齢雇用継続基本給付金」とはどういったものかと、その申請方法について解説します。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

「高年齢雇用継続基本給付金」とは?

高年齢雇用継続基本給付金とは、60歳以降の賃金額が60歳到達時の75%未満になった方を対象に最高で賃金額の15%を65歳まで支給するものです。この給付金の目的は、高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用の継続を援助・促進することです。
 

(1)支給対象者

基本的には賃金が低下した方々へ支給される制度ですが、以下の6つの要件をすべて満たすことが必要です。


1. 支給対象月の初日から末日まで被保険者であること。

2. 支給対象月中に支払われた賃金が、60 歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下していること。

3. 支給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額(※)未満であること。

4. 申請した後に算出された基本給付金額が、最低限度額(※)を超えていること。

5. 支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付もしくは介護休業給付の支給の対象になっていないこと。

6. 被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であること。

(※)この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。ちなみに、令和5年8月1日に支給限度額が37万452円へ、最低限度額が2196円へ変更になっています。
 

(2)支給期間

支給対象となる人が60歳となった月から、65歳になる月までが支給の期間となります。
 

(3)支給額

基本的に支給額は、60歳に到達する前6ヶ月間の平均賃金である「賃金月額」に対して、支給の対象となる月の支払賃金額の低下率により決定されます。低下率は、以下の計算式で算定されます。
 
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時点の賃金月額×100
 

1. 低下率が61%以下である場合

支給額=支給対象月に支払われた賃金額×15%
 

2. 低下率が61%を超えて75%未満である場合

支給額=(137.25/280)×60歳到達前の6ヶ月間の平均賃金額-(183/280)×支給対象月に支払われた賃金額
 

(4)60歳到達前の6ヶ月間の平均賃金額が30万円である場合の支給額の例

 

1. 支給対象月に支払われた賃金額が26万円に低下した場合

低下率(%)=26/30×100=86.7%となり、賃金が75%未満に低下していないので、支給金は支給されません
 

2. 支給対象月に支払われた賃金額が20万円に低下した場合

低下率が66.7%で、61%超75%未満になるため、
 
支給額=(137.25/280)×30万円-(183/280)×20万円 = 1万6339円
 
です
 

3. 支給対象月に支払われた賃金額が18万円に低下した場合

低下率が60%であり、61%以下であるため、
 
支給額=18万円×15%=2万7000円
 
です
 

4. 支給対象月に支払われた賃金額が8000円に低下した場合

低下率が2.67%であり、61%以下であるため、
 
支給額=8000円×15%=1200円
 
ですが、最低限度額の2196円以下ですので支給金は支給されません
 

申請の手続きはどうする?

高年齢雇用継続基本給付金の申請手続きは、在職中の事業所を管轄するハローワークへ行って申請手続きを行うことが可能です。
 
ただし、再雇用者の場合には勤務先で行ってくれます。会社で申請をしてもらえれば細かい手続きを自分自身でする必要はありません。詳細内容を知りたい人は、勤務先の担当部門に確認するとよいでしょう。
 

まとめ

再雇用になった方の賃金額が60歳到達時の75%未満になった場合に、最高で賃金額の15%を高年齢雇用継続基本給付金として受給できます。支給期間は、支給対象となる人が60歳となった月から65歳になる月までが対象です。
 
申請手続きは、ご自身でハローワークへ行って申請手続きを行うことも可能ですが、勤務先で申請してくれるので活用するとよいでしょう。
 

出典

パーソル研究所 70歳までの就業時代に向け、シニア人材の実態や若手への影響に関する調査結果を発表 定年後再雇用で年収は平均44.3%減。過半数は職務変わらず
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付
厚生労働省 「令和5年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。」
 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

ライターさん募集