更新日: 2024.01.05 セカンドライフ
60歳で定年退職したら年金をもらうまでの5年間で必要な生活費はどれくらいでしょうか?
本記事では、年金受給開始までの5年間で必要になる生活費の額から、5年間の生活費を準備する方法を解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
60歳で定年退職したら年金支給までに必要な生活費は1722万円
政府統計ポータルサイト「e-Stat」に公開された2022年の家計調査の資料によると、60歳〜64歳までの方の1ヶ月あたりの消費支出は28万7126円です。消費の内訳は【図表1】のとおりです。
【図表1】
食料 | 7万9865円 |
住居 | 1万979円 |
光熱・水道 | 2万959円 |
家具・家事用品 | 1万2751円 |
被服および履物 | 8298円 |
保険医療 | 1万8885円 |
交通・通信 | 3万4008円 |
教育 | 2554円 |
教養娯楽 | 2万9403円 |
その他の消費支出 | 5万5426円 |
こづかい(使途不明) | 2001円 |
交際費 | 1万8280円 |
仕送り金 | 2113円 |
※e-Stat 2022年 家計調査 3-2 世帯主の年齢階級別より筆者作成
1ヶ月あたりの消費支出から算出した、5年間(60ヶ月)の生活費は以下のとおりです。
●28万7126円×60ヶ月=1722万7560円
持ち家か賃貸か、また健康状態等によっても必要な生活費は変わりますが、5年間で必要な生活費は1722万7560円と試算できます。
65歳で年金をもらうまでの生活費を退職金でカバーできるか?
定年退職後に年金を受給開始するまでの生活費を退職金でカバーできるか検証します。まず、厚生労働省の公表した令和5年就労条件総合調査によると、退職金の支給実態は【図表2】のとおりです。
【図表2】
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) | 1896万円 |
高校卒(管理・事務・技術職) | 1682万円 |
高校卒(現業職) | 1183万円 |
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態より筆者作成
60歳で定年退職してから年金を受け取るまでの5年間で必要な生活費は1722万7560円です。よって、大学、大学院卒の管理・事務・技術職であれば、退職金だけで生活費をカバーできます。ただし、それ以外の方の場合、退職金だけでは生活費が不足してしまう点に注意しておきましょう。
なお、現業職とは、管理職、事務職、研究職以外の職種を指します。
定年退職から年金を受け取るまでの生活費を準備する方法
多くの方が、退職金だけで定年退職から年金の受給開始までに必要な生活費を賄うことができません。
貯金がある場合は貯金から補てんするのも1つの方法ですが、貯金は老後資金として残しておきたい資金です。したがって、定年退職から年金の受給開始までに、必要となる生活費を得られる方法を考えておく必要があります。
本項では、定年退職から年金を受け取るまでの生活費を準備する方法を解説します。
年金を繰上げ受給する
年金は最大で60歳からの繰上げ受給が可能です。退職金だけでは生活費をカバーできない方の場合、繰上げ受給を利用するのもよいでしょう。
ただし、繰上げ受給の場合、受け取れる年金額が減額されてしまう点に注意が必要です。昭和37年4月2日以降生まれの方の場合、60歳まで繰上げた場合、受け取れる年金額が24.0%減額されます。
令和5年4月分より、67歳以下の方の年金額は【図表3】のとおりです。
【図表3】
国民年金 | 6万6250円 |
厚生年金 | 22万4482円 |
合計 | 29万732円 |
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等についてより筆者作成
60歳まで繰上げ受給をして受け取れる年金額は「29万732円×(100-24%)=22万956円」となります。
65歳まで働き続ける
継続雇用制度等を活用して65歳の年金受給まで働き続けるのもよいでしょう。
安定した雇用を確保するために、定年年齢が65歳未満の定められた事業所では、次のいずれかの措置を実施することが求められています。
●65歳までの定年の引き上げ
●65歳までの継続雇用制度の導入
●定年の廃止
継続雇用制度は、定年後も引き続き雇用する再雇用制度等が含まれます。
資産運用で老後資金を備える
現役世代のうちに、iDeCoやNISAを活用して老後資金を備えるようにしておくことも重要です。2024年より、新NISA制度の開始も予定されていますので、早めに準備をしておくようにしましょう。
60歳の定年退職から年金受給開始まで退職金だけでは不足してしまう可能性が高い
60歳の定年退職から65歳の年金の受給開始までに必要な生活費は1722万7560円です。大卒、大学院卒の管理職、事務職、研究職であれば、退職金で必要な生活費をカバーできますが、それ以外の方は退職金だけでは資金がショートしてしまう可能性が高くなってしまいます。
老後のゆとりのある生活のためにも、60歳で定年退職を迎えるまでに、退職金以外で生活費をカバーできる方法を考えておく必要があります。
出典
e-Stat 家計調査 2022年 世帯主の年齢階級別 二人以上の世帯・勤労者世帯・無職世帯
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 高年齢者の雇用
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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