更新日: 2024.01.22 定年・退職
60歳で退職金を受け取りますが、「住宅ローン」を繰上げ返済すべきでしょうか? 老後のためにも「全額繰上げ返済」を考えています。注意点はあるでしょうか?
本記事では、住宅ローンの繰上げ返済の方法や注意点について解説します。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
繰上げ返済とは
繰上げ返済とは、毎月の返済と別に、まとまった額の返済をする方法です。この返済は元本の返済のみに充てることができるため、その分支払い利息が少なくなり、住宅ローンの総支払い額を軽減することが可能です。繰上げ返済は基本的には任意のタイミングで行うことができ、「全額繰上げ返済」と「一部繰上げ返済」の方法があります。
全額繰上げ返済とは住宅ローンの返済中に、全ての残高を繰上げて返済する方法です。一部繰上げ返済とは毎月の返済額とは別に、まとまった金額を繰上げて支払う返済方法です。それぞれ、ローンの支払利息総額を減らすために行うものです。
受け取る退職金額が大きい人は、全額繰上げ返済を検討してもよいかもしれません。しかし退職金は重要な老後資金ですので、ローン返済に使った後、手元に少額しか残らないという状況はリスクが高いです。無理して全額でなく、一部繰上げ返済を検討するという判断も必要でしょう。
一部繰上げ返済には次の2つの方法があります。
返済期間短縮型
返済期間短縮型は、毎月の返済額を変えることなく、返済期間を短縮する方法です。短縮した期間分の利息を支払う必要がなくなります。利息を軽減する効果としては、次に紹介する返済額軽減型より大きくなります。
返済額軽減型
返済額軽減型は、返済期間を変えることなく、毎月の返済額を軽減する方法です。全期間に及ぶ元本の一部を前倒しで返済でき、支払う利息総額が減る仕組みです。利息軽減効果としては返済期間短縮型より小さいですが、毎月の負担を減らすことが可能です。
繰上げ返済の注意点
繰上げ返済を行う際の注意点を紹介します。
繰上げ返済の実行後は取り消し不可
繰上げ返済のメリットは支払い利息の軽減ですが、当然手元の資金は減少します。繰上げ返済を実行した後に必要な支出が発生しても、繰上げ返済を取り消すことはできません。先述したように、退職金は大事な老後資金です。繰上げ返済をする際は、計画的な老後資金計画を立ててからにしましょう。
団体信用生命保険(団信)が消滅する
住宅ローンには「団信」が付帯しています。団信とは「団体信用生命保険」の略で、住宅ローンの返済中に、死亡したり高度障害状態となったりした際に、住宅ローン借入残高をゼロにできる保険です。介護への備えも付帯している「介護保障付きの団信」や、ガンへの備えが付帯されている「ガン団信」など、多様なラインナップがあります。
しかし、ローンを返済すると返済した分の団信も消滅します。つまり、繰上げ完済後に保険金の支給事由に該当した場合には、適用がされず、保険も受けられないことになります。
住宅ローン控除の適用外になる可能性
住宅ローン控除の適用を受けている場合にも、注意する点があります。住宅ローン控除は、年末時点の借入残高をもとに金額が決定されます。そのため、繰上げ返済を行ったことで借入残高が減ると、住宅ローン控除の金額は減少します。また、返済期間短縮型の一部繰上げ返済を実行した場合には、当初の返済開始からの返済期間が10年未満になると住宅ローン控除の適用外となります。
まとめ
利息の軽減効果が期待できる繰上げ返済ですが、注意点も多いです。ライフプランや手元資金、住宅ローン控除といった要素をもとに、繰上げ返済すべきかを検討してみてください。
出典
一般社団法人 全国銀行協会 Q. 住宅ローンの繰り上げ返済、効果的に行うには?
国土交通省 住宅ローン減税
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート