更新日: 2024.01.22 セカンドライフ

年収600万円の会社員ですが、仕事がキツく55歳で「早期退職」を考えています。貯金と退職金でそれぞれ「2000万円」あれば大丈夫ですか? 老後の年金が減って「損」でしょうか?

年収600万円の会社員ですが、仕事がキツく55歳で「早期退職」を考えています。貯金と退職金でそれぞれ「2000万円」あれば大丈夫ですか? 老後の年金が減って「損」でしょうか?
50代も後半にさしかかると、年金がもらえる65歳までの生活をイメージしやすくなります。そのため、今の仕事がつらいと感じていて、ある程度の貯蓄がある人の中には、できれば早期退職して自由な暮らしを満喫したいと思っている人もいるのではないでしょうか。
 
本記事では予定より5年早く退職する人を例に、退職後に必要となる年間の生活費や、早期退職でどれぐらい年金額が減るのかを解説します。

早期退職から年金支給開始までにかかる生活費の目安

まず、55歳で早期退職してから年金の受給開始年齢である65歳までの、10年間の生活費を考えてみましょう。総務省が公表した2022年の家計調査報告によると、2人以上の世帯の1ヶ月あたりの消費支出は世帯主が50代の場合は月額35万9963円、年額約430万円です。また世帯主が60代の場合だと月額29万9362円、年額約360万円となっています。
 
この調査の消費支出を参考に、55歳から65歳までの総支出をシミュレーションしてみましょう。

55歳から60歳まで 5年×430万円=2150万円
60歳から65歳まで 5年×360万円=1800万円

合計約3950万円もの生活費が必要だということがわかりました。
 
つまり現在の貯蓄が2000万円で、退職金が2000万円程度あったとしても、55歳から65歳までの10年間、世帯収入がなければ貯蓄が底をついてしまうことになります。
 

早期退職は年金額にどう影響するのか

早期退職は貯蓄の目減りだけではなく、将来もらえる年金額にも影響があるため注意が必要です。国民年金(老齢基礎年金部分)については、60歳までは加入が義務付けられているため、退職後も保険料を払ったと仮定すると年金額に変化はありません。
 
しかし、報酬に比例して保険料を納める老齢厚生年金については、再就職して保険料を納付しない場合、年金金額が減少してしまいます。仮に年収600万円、60歳まで働く予定だった人が5年早く55歳で早期退職した場合は、月50万円を報酬月額と仮定すると年金の減少額は以下のとおりです。
 
50万円×5.481/1000×60ヶ月=16万4430円
 
平均年収600万円で60歳まで働き、厚生年金の加入期間が20歳から60歳の40年間だとすると、老齢厚生年金は50万円×5.481/1000×480ヶ月=131万5440円です。老齢基礎年金は満額79万5000円(2023年度)のため、合計で年間約211万円の年金を受け取れますが、5年早期退職することで200万円を割り込みます。
 
65歳から69歳の無職世帯(2人以上)の場合でも月額28万10円、年間約336万円の支出があることを考えると、早期退職による無収入期間ができることや将来の年金額に不安がないとはいえないかもしれません。
 

もし、少しでも長く働いたら

逆に少しでも長く、今回の条件で働いた場合も試算してみましょう。まず1年長く働くとどうでしょうか。
 
1年長く56歳まで働くことで、年収600万円-支出430万円=170万円となり、170万円を貯蓄に回せるので貯蓄額は退職金と合わせて最大4170万円まで増えます。
 
同時に退職後の消費支出も以下のとおりとなり、合計9年間で3520万円に減少し、4170万円-3520万円=650万円ほど貯蓄が残ります。

56歳から60歳までの4年間で4年×430万円=1720万円
60歳から65歳までの5年間で5年×360万円=1800万円

さらにもう1年長く57歳まで働くと、同様の計算で65歳時には1250万円程度の貯蓄が残ります。また、年金額の減少幅も小さくなるため、57歳まで働けば、年金額は年間200万円以上の受給が可能です。何より、これだけ貯蓄が残れば繰下げ受給なども含めて検討できるため、選択肢が広がります。
 

まとめ

早期退職での貯蓄額や年金額の変動シミュレーションでは、1年でも長く働くことで大きな差が生じることがわかりました。しかし、無理に仕事を続けて身体を壊しては元も子もありません。今の仕事を続ける、あるいは完全リタイアするといった2択だけでなく、年収は下がっても無理のない仕事に再就職するなど、働き方についてもさまざまな選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
日本年金機構 は行 報酬比例部分
 
執筆者:松尾知真
FP2級

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