更新日: 2024.01.20 セカンドライフ
海外旅行に行くと、現地のシニア世代がのんびり優雅に暮らしているのを見かけます。そんなに物価が安いのでしょうか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
日本人なら為替の影響は避けられない
現地で暮らすシニア世代には、もともとそこで生まれ育った人々と、他国から移民や移住して暮らしている人がいます。
まず、もともとその国や地域で生まれ育った人の場合、年金制度や年齢やステータスに応じて受けられる福祉などは、その国の基準に準じます。日本よりも、優れた福祉を提供している国や地域はあります。ただし、必ずしもすべてが日本より優れているとは言い切れません。住んでいる地に慣れ親しんでいることで、精神的なゆとりは大きくなり、他国から訪れた人から見れば、ゆとりがあるように感じられるのではないでしょうか。
では、日本から移民や移住(ロングステイビザを取得等)をした人たちについて考えてみましょう。
移民や移住をしたタイミングによって、その国の公的年金制度に加入しなければならないこともありますが、定年退職後に海外暮らしをする場合には、日本の年金を外国で受け取ることになります。
日本の年金は、海外で暮らしていても現地の銀行口座を指定して受給することが可能なのですが、米ドルやユーロなどで支払われることになります。それゆえ、為替レートの影響を受けることになってしまいます。
円高になれば、日本円で受給するよりも目減りをしているように感じることでしょう。反対に円安になっているときには、円安のメリットを享受できます。
とはいえ、いずれにしても為替手数料は生じてしまいますので、注意が必要です。
本当に物価は安いのか?
国や地域によっては物価が安いところもありますが、世界中の国や地域の物価が、どこでも日本よりも安いわけではありません。また、いくら物価が安くても為替の影響を受けている場合は、割高になってしまうことも十分に考えられます。
現地で暮らすシニア世代の場合、一時的な観光ではなく、ロングステイビザなどの長期滞在用のビザを取得している人たちもいます。ロングステイビザの取得要件は国や地域によって違いはありますが、一時金として数千万円以上の預金を現地の銀行口座に預けていることが取得の条件になっている国も多く、運用益を得て、為替の影響を受けずに現地の通貨を得ていたりもします。
また、若いうちに移住しているケースでは、現地で働くなどして収入のベースが日本よりも現地となっている場合も、為替の影響を受けにくい状態になります。その場合、物価の安い地域に暮らしていれば、物価の恩恵は受けられます。
ロングステイビザなどの発給を受ける前に考えること
物価の安い地域で暮らすことが可能なら、ロングステイビザなどを早めに取得すれば、問題ないのでは? と考える人はいることでしょう。
とはいえ、ロングステイビザなどの発給要件は、以前よりも厳しくなっている傾向にあります。一時的に預け入れる金額も為替の影響を受けるため、予想以上に多くの日本円を準備しなければならないことも少なくありません。
あわせて、年間の収入要件が求められている場合は、収入要件もクリアできるのかを確認してみましょう。
収入要件は、給与や年金、賃貸収入などで一定額以上が求められます。このとき、夫婦2人ならクリアできていても、1人になるとクリアできなくなってしまう可能性があります。このため、ロングステイビザなどの発給を受ける前には、現地の通貨でいくらかかるのか、日本円に換算するといくらになるのかを確認してください。また、2人でも1人でも要件を満たして暮らしていけるのかを確認し、慎重に判断することが大切です。
セカンドライフにおいて、年金は貴重な収入です。一時的に物価の安い地域で暮らして、支出を抑えようとする人もいます。
ただし、日本に帰国する前提で海外暮らしをする場合、現地の生活費とあわせて日本に家を持っている場合、それを維持するコストもかかってしまいますので、その分も考慮し、本当に支出を抑えられるのかを判断してください。
まとめ
将来にわたって海外で暮らすケースや、あくまでも一時的に海外で暮らすケースもあると思います。
特に、一時的に海外で暮らすケースでは、為替の影響を受けることが考えられます。憧れだけでは海外生活は送れません。自分の持っている資産や収入で、日本での財産維持と海外での生活費を捻出できるのか、慎重に見極める必要があります。移住をする前にはどのような費用がかかるのかを確認し、お金の流れをシミュレーションして、無理なく生活できるのかを確認することが大切です。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト