更新日: 2024.02.01 その他老後
「老後2000万問題」といわれていますが、それは孫への「養育費援助」も含まれているのでしょうか?それとも生活費のみの計算なのでしょうか?
本記事では、老後2000万問題に含まれる費用について解説します。老後2000万問題に孫への教育費が含まれているのかを確認し、老後の資金計画を立てる際に役立ててください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
老後2000万問題には孫への教育費は含まれていない
金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」は2019年、「2017年の総務省家計調査(家計収支編)」における高齢夫婦の世帯をモデルとして、老後2000万問題をまとめました。その結果、毎月の収支がおよそ5.5万円の赤字となり、老後30年間でおよそ2000万円の赤字が生じると指摘しています。
ただし、このモデルケースの支出は食費や住居費など一般的な項目で構成されており、孫への教育費は考慮されていません。
モデルケースの支出の割合
老後の2000万円不足問題は、総務省が発表した「家計調査報告 平成29年」において、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の家計収支をモデルケースとしています。
主な収入と支出の割合は、表1のとおりです。
【表1】
収入合計 | 20万9198円 | 支出合計 | 26万3717円 |
内訳 | 内訳 | ||
年金 | 19.1万円 | 食費 | 6.4万円 |
その他 | 1.8万円 | 住居費 | 1.4万円 |
水道光熱費 | 1.9万円 | ||
保健医療費 | 1.6万円 | ||
交通・通信費 | 2.8万円 | ||
教養娯楽費 | 2.5万円 | ||
税金や社会保険料 | 2.8万円 | ||
その他 | 6.9万円 |
※総務省「家計調査報告 平成29年 28~29p」を参考に筆者が作成
上記のモデルケースでは、毎月5万4520円の赤字となります。老後期間を30年と考えた場合、1980万円(およそ2000万円)不足することになります。
その他の支出には、理美容、たばこ、小遣い、交際費などが含まれており、養育費は考慮されていません。
子どもの教育費の平均
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によれば、幼稚園から高校卒業までにかかる学習費の総額は、表2のとおりです。
【表2】
学習費総額 | ||
---|---|---|
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 16万5126円 | 30万8909円 |
小学校 | 35万2566円 | 166万6949円 |
中学校 | 53万8799円 | 143万6353円 |
高校 | 51万2971円 | 105万4444円 |
※文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します」を基に筆者作成
公立の場合は幼稚園から高校までの費用は156万9462円、私立の場合は446万6655円となります。
「学習費総額」には、以下の三つの費用が含まれています。
・学校教育費:入学金、授業料、通学関係費など
・学校給食費:給食費
・学校外活動費:塾、家庭教師、地域活動など
また、日本政策金融公庫の「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」によると、大学および短大にかかる費用は、表3のとおりです。
【表3】
入学費用 | 在学費用(年間) | 入学から卒業まで | |
---|---|---|---|
国公立大学 | 67.2万円 | 103.5万円 | 481.2万円 |
私立大学文系 | 81.8万円 | 152万円 | 689.8万円 |
私立大学理系 | 88.8万円 | 183.2万円 | 821.6万円 |
短大 | 73万円 | 137万円 | 347万円 |
※日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」を基に筆者作成
※「入学から卒業まで」は「入学費用+在学費用×4年 ※短大は2年」で計算したものです。
孫の教育費に備えるためには早めの準備が大切
老後2000万問題とされる支出には、孫の教育費は含まれていません。そのため、孫の教育費を援助する場合は、老後2000万問題とは別の負担として考慮する必要があります。
子供の教育費が高額になることもあるため、教育費を援助する場合は早くから計画的に準備しましょう。教育費も考慮に入れつつ、将来の資金計画を立ててみてください。
出典
総務省 家計調査報告 平成29年
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理
文部科学省 令和3年度子供の学習費調査の結果について
日本政策金融公庫 令和3年度 教育費負担の実態調査結果
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー