更新日: 2024.02.24 セカンドライフ
親が今年、定年退職します。今のまま賃貸暮らしを続けても大丈夫なのでしょうか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
必ずしも賃貸暮らしが悪いわけではない
リタイアメントプラン関連の記事を読んでいると、「老後は持ち家のほうがよい」等の文言が使われていることが多く、そのため、持ち家でなければいけないという印象を持つ人は少なくありません。
「老後は持ち家のほうがよい」等の文言を入れる理由はさまざまありますが、いずれにしても住宅ローンが完済済みのケースが想定されるでしょう。
つまり、いくら持ち家であっても住宅ローンの残高が多ければ、毎月のローンの支払いをはじめ、固定資産税や修繕費等が必要になります。そのような場合は、むしろ賃貸暮らしのほうが毎月の支出が抑えられることが考えられます。
このように持ち家の支出を考慮していくと、定年退職後を迎えるタイミングで賃貸暮らしをしていることが、必ずしも悪いというわけではありません。とはいえ、定年退職後では再就職するにしても、現役世代に比べて収入が落ちるケースは多く、借りている賃貸住宅の家賃支払いが困難になってしまう可能性があります。
賃貸暮らしを継続する予定であれば、定年退職後に再就職して得られる給与や受給する年金等の収入から毎月の家賃を支払うことができるか、シミュレーションしておくことが大切です。
もし、現在の賃貸物件の支払いが苦しくなると考えられるなら、負担のない家賃はいくらかを算出し、住み替えを検討してください。
年齢を重ねることで新たなリスクが生じることを知っておく
自分たちは賃貸物件で暮らしたいと考えていても、住み替えをするときには、物件によって年齢を理由に入居を断られてしまう、審査に落ちてしまう可能性があります。
また、たとえ入居できる物件が見つかった場合でも、バリアフリーでないことも多いです。その他、棚が上部に取り付けてあり、脚立などを利用しないとモノが取り出せない物件などもあります。
総合して、設備の面から年齢を重ねることで暮らしにくくなってしまうことが考えられます。日々の生活を送るだけで、けがのリスクが生じてしまうことがあるのではないでしょうか。あるいは、年齢を重ねたら高齢者向け住宅へ住み替えるという選択肢もあります。
いわゆる高齢者向け住宅といわれている物件は、生活相談サービスや状況把握(安否確認)サービス等の生活支援サービス、有料になりますが食事の提供が行われて大変便利です。
ただ、このような便利なサービスが提供されるため、一般の賃貸物件よりも月々の負担などが高額になってしまうため、かえって支出が多くなってしまうことが考えられます。定年後の収入や財産に不安がある人にとっては、あまり適さない物件ともいえるのではないでしょうか。
家族で話し合いの機会を持つ
繰り返しになりますが、大切なことはシミュレーションをして、賃貸物件に住み続ける資産的背景があるのかを確認することです。
その他には、子どもの家族と同居して家賃の支払額を抑える。家賃の負担が重い場合には、不足額を子どもが資金援助をするという方法も検討する必要があります。
どの方法にするかは、今後はどこで、どのように暮らしていくのか、収入の面で不安はないのかを聞き、家族で話し合うことが大切です。よく、「いずれは親との同居を考えている」という話を耳にすることがあります。この場合も、「いずれ」はいつのタイミングにするのか等も話し合っておくことが大切です。
賃貸暮らしで不安を感じている人がいる一方、住宅ローンの負担や震災による倒壊など、持ち家による不安を感じている人もいます。大切なのは、親も子どもも不安を抱かずに生活を送れるようにすること。不安をできるだけ取り除くことです。
ぜひ、話し合いの機会を持ってみてください。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト