定年後に年収が下がったら「高年齢雇用継続給付」でいくら補填される?「年収500万円→300万円」に減少したケースで解説
配信日: 2024.03.01
本記事では、高年齢雇用継続給付のうち「高年齢雇用継続基本給付金」について、受給要件や受給額等を、計算例を交えて解説します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
高年齢雇用継続給付の概要
高年齢雇用継続給付とは、60歳時の賃金に比べ、それ以後の賃金が75%未満に低下した場合にハローワークへの支給申請により受給できる給付金です。
受給できる人は
高年齢雇用継続給付(基本給付金)を受給できるのは、次の全てに当てはまる人です。
●雇用保険の被保険者期間が5年以上ある
●60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者
●60歳時の賃金に比べ、60歳以後の賃金が75%未満に低下している
なお、高年齢雇用継続給付(基本給付金)が受給できるのは、60歳に到達した月から65歳に到達する月までです。
高年齢雇用継続給付の額は?
高年齢雇用継続給付の額は「60歳以後に支払われた1ヶ月の賃金×支給率」で算出します。支給率は、図表1のとおり60歳以後の賃金低下率に応じて決まり、上限は15%です。
図表1
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
60歳時の1ヶ月の賃金が35万円だった人が、60歳以後に20万円に下がった場合、低下率は約57%です。57%は上表の「61%以下」に該当するため、支給率は15%で、高年齢雇用継続給付の額は3万円となります。
欠勤等があったら?
60歳以後の月に病気など一定の理由により欠勤し、そのため賃金が下がった場合は「欠勤がなかったもの」として賃金を計算し、高年齢雇用継続給付の額を算出します。
また繁忙期など賃金が多かった月は、連動して高年齢雇用継続給付の額も増えます。そのため、高年齢雇用継続給付の額は、毎月一定ではありません。
なお、高年齢雇用継続給付には限度額があります。支払われた賃金と高年齢雇用継続給付の合計が限度額を超えたときは、超えた分の高年齢雇用継続給付が減額される仕組みです。つまり「月給+高年齢雇用継続基本給付金」のマックスは「限度額」となります。
なお、高年齢雇用継続給付の限度額は毎年8月に変更され、2024年2月時点では37万452円です。
高年齢雇用継続給付はいくら?
では、年収が500万円から300万円に下がったケースについて、高年齢雇用継続給付の額を計算してみましょう。
500万円が300万円に低下したときの給付金額
便宜上、年収500万円と300万円を単純に12等分して計算します。その場合、1ヶ月あたりの賃金が41万6666円から25万円に下がったことになり、賃金低下率は60%です。低下率60%に対応する支給率は15%であるため、高年齢雇用継続給付は「3万7500円」となります。
賃金 25万円×支給率15%=高年齢雇用継続給付 3万7500円
「でも、月給が60%も下がるのだから、3万7500円もらっても足りない」と思う人もいるかもしれません。しかし図表2のように、賃金だけでなく社会保険料も所得税も下がります。しかも高年齢雇用継続給付は非課税です。
図表2
厚生労働省 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表および給与所得の源泉徴収税額表より筆者作成
※通勤手当なし、扶養なし、東京都の会社に勤務、2024年2月現在の社会保険料率で計算しています。
図表2のように、賃金とともに社会保険料や所得税も下がり、高年齢雇用継続給付もプラスされるため、実際に60歳以後に手にする額は60%までは低下しないのです。
まとめ
高年齢雇用継続給付(基本給付金)は、60歳時に比べ75%以上賃金が低下した場合のための給付金で、60歳に到達した月から65歳に到達した月まで受給できます。受給額は60歳以後の賃金に支給率を乗じて計算され、支給率の上限は15%です。
なお、現在15%である支給率の上限は、2025年4月からは10%に減少することがすでに決定されています。それでも高年齢雇用継続給付は、働く高年齢者にとって心強い給付金に変わりないでしょう。
出典
ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 令和5年8月1日から支給限度額が変更になります
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士