夫婦で年金額は「月23万円」だけど「賃貸」で暮らすのは厳しい? 老後に必要な支出をもとに解説
配信日: 2024.03.23
夫婦の年金23万円の場合、賃貸で暮らすのが現実的かどうかについて65歳以上夫婦のみ世帯の家計調査報告をもとに検証してみます。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
令和6年度の厚生年金は2.7%アップ
2024年1月、厚生労働省が2024年度の年金額改定について公表しました。年金は「マクロ経済スライド」の方法がとられており、毎年の賃金や物価によって年金額を調整しています。2024年は2.7%の引上げが決定しました。具体的には図表1のとおりです。
図表1
厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせしますより
国民年金のみを満額受給している人は月1750円のアップ、標準的な夫婦2人世帯なら世帯で月6001円のアップが見込まれます。なお標準的な夫婦2人世帯の年金額は、平均年収約530万円で40年間就業した場合の老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を合わせた金額です。
夫婦で23万円なら賃貸暮らしは可能?
賃金や物価の状況に合わせて上昇した年金額ですが、標準的な夫婦2人世帯で毎月23万円の老齢年金を受給した場合、賃貸で暮らし続けることは可能でしょうか? その生活ぶりについて検証してみましょう。
標準的な無職夫婦2人世帯の収支を解説
2023年度の総務省の家計調査報告をもとに、2024年度の標準的な夫婦の老齢年金支給額23万483円の収支をシミュレーションしました。支給される老齢年金のうち税金や社会保険料などの非消費支出は3万1538円のため、実際に使える金額は19万8945円となります。シミュレーションの結果は図表2のとおりです。
図表2
総務省 家計調査報告 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支-2023年-の支出割合を基に筆者作成
住居費の内訳は収入のうち6.7%、約1万3000円です。賃貸の人の住居費だけでなく、持ち家の人の住居費も平均した支出となるため、賃料と考えるには少ない金額となっています。
年金額23万円で賃貸ならどんな暮らし?
年金額23万円で賃貸に住む場合、賃料は極力金額を抑える必要がありそうです。標準的な夫婦2人世帯で年金額が23万円の場合は、都営住宅に入居できる可能性があります。
この場合、所得区分は0円~162万8000円の区分に該当するため、2人世帯で練馬区の南田中アパート2DKの部屋の場合、使用料は1万7600円で済みそうです。また、同じアパートでも3DKの間取りの場合には使用料が3万300円となり大きく平均額を超えてしまいます。
使用料1万7600円の場合でも平均の住居費を約4000円超えているため、食費や交際費などで調整する必要がありそうです。夫婦の年金額23万円の場合には、食品や衣類、家族や友人と出掛けるときなど無駄遣いをしないように心がける必要があるでしょう。
さらに一般の賃貸アパートなどに住む場合、東京都練馬区の2DKアパートの賃料平均は約10万5000円です。ワンルームの賃料平均でも6万3000円のため、住居費が可処分所得の約30%~50%も占めることになります。65歳から30年賃貸で暮らすと仮定すると、かなり節約に努めるか、3000万円以上の貯蓄が必要となるでしょう。
まとめ
2024年度の老齢年金支給額が2.7%引き上げられることが公表されました。妻が専業主婦、夫が平均年収約530万円で40年間就業した夫婦の場合、年金支給額は約23万円となります。夫婦の年金受給額が23万円台になったことは喜ばしいことですが、税金や社会保険料の支払いによって実際の手取りは20万円を切ります。
この場合、セカンドライフを賃貸で暮らし続ける生活は楽とはいえないでしょう。都営住宅に入居できた場合には、手頃な金額のエリアや賃貸住宅を選べば支出平均に近い1万7000円程度で済みます。しかし、一般のアパートなどに住むとなると、同じエリアのワンルームでも6万円以上かかる可能性が高く、節約に励んだり、賃貸に住み続けるための貯蓄をしたりしておくことが必要です。
出典
厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
総務省 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要
東京都住宅政策本部 申し込み方法、使用料(賃料)、申し込みから入居まで
執筆者:古澤綾
FP2級