更新日: 2024.04.15 定年・退職
会社から「定年後は業務委託で働かないか」と相談されました。再雇用で考えていたのですが「年収400万円」の場合、どちらが良いのでしょうか?
定年後の働き方は、これまでと同じ企業で働く場合は定年後再雇用と業務委託、パートがメインです。本記事では、年収400万円を想定して定年後の再雇用と業務委託のどちらが得するのかについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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再雇用と業務委託の比較
まずは再雇用と業務委託の違いを比較します。
再雇用の場合
「定年後再雇用」とは、従業員が定年退職した後に、同じ企業と再び雇用契約を結ぶ制度です。したがって、社会保険・雇用保険・労災保険は、定年前と変わりありません。
具体的には、社会保険は労使折半です。また、雇用保険は事業ごとに労使負担割合が異なります。 加えて、労災保険は全額事業主負担です。したがって、万一の場合は、傷病手当金などを受け取れます。
業務委託の場合
「業務委託」とは、企業から仕事を請け負って対価を受け取る働き方です。業務委託の場合、定年退職後は個人事業主として働きます。
したがって、社会保険は「原則全額個人負担」です。ただし、健康保険は原則2年間にわたって退職前の保険料で任意継続できます。
また、労災などの保障は自分で確保しなければなりません。
再雇用と業務委託の所得税計算方法
再雇用(会社員)と業務委託(個人事業主)では、所得税の計算方法が異なります。
再雇用の場合
再雇用(会社員)の所得税計算方法は次のとおりです。
給与収入-非課税の手当-給与所得控除=給与所得
給与所得-所得控除=課税所得
課税所得×税率-控除額=所得税額
したがって、控除できる金額には制限があります。
業務委託の場合
業務委託(個人事業主)の所得税計算方法は次のとおりです。
収入(売上など)-必要経費-所得控除=課税所得
課税所得×税率-控除額=所得税額
個人事業主の場合、会社員とは異なり課税所得の計算にあたり必要経費を差し引けます。
具体的には、会社員が仕事に必要な文具や電子機器などを自費で買いそろえても給与所得から控除できません。しかし、個人事業主の場合、業務に必要な支出は必要経費に算入でき、収入から差し引けます。
再雇用と業務委託で年収400万円の場合の手取り
令和4年分の民間給与実態統計調査によると、日本の給与所得者の平均年収は458万円です。これに基づき、再雇用と業務委託でそれぞれ400万円の収入があった場合を例に計算します。
※なお、計算にあたり、都内在住40歳以上の単身者の想定で比較します。
再雇用の場合
再雇用の場合、社会保険・所得税・住民税の負担はおおむね図表1のとおりです。手取りは約303万円です。
図表1
項目 | 金額 |
---|---|
社会保険料 | 約61万3000円 |
所得税 | 約17万9000円 |
住民税 | 約17万8000円 |
合計 | 約97万円 |
筆者作成
業務委託の場合
必要経費ゼロの業務委託の場合、社会保険・所得税・住民税の負担はおおむね図表2のとおりです。手取りは約282万円です。
図表2
項目 | 金額 |
---|---|
社会保険料 | 約70万円 |
所得税 | 約24万円 |
住民税 | 約24万円 |
合計 | 約118万円 |
筆者作成
しかし、実際には、必要経費が収入から差し引かれるので金額は変動します。
結局、再雇用と業務委託のどちらが得か
再雇用と業務委託のどちらが得なのかは、手取り金額に大きな差がないため状況によって異なります。収入を安定させたかったり体調に不安があったりする人は、再雇用を選択した方がよいでしょう。
一方、大きく稼ぎたかったり必要経費を多く使ったりする人は、業務委託を選択するのもひとつの手段です。
まとめ
今回は、定年後の再雇用と業務委託のどちらが得するのかについて解説しました。自身の状況によって、再雇用と業務委託のどちらを選択すべきか異なるので、1度計算してみてはいかがでしょうか。
出典
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査
東京都主税局 個人住民税
東京都世田谷区 令和5年度国民健康保険料早見表
東京都世田谷区 国民年金の保険料と納付方法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー