更新日: 2024.05.14 定年・退職

もうすぐ定年ですが「600万円」しか貯蓄できませんでした。住宅ローンは完済したので、老後「家賃なし」なら問題ないでしょうか? 年金は妻と「月17万円」の見込みです

もうすぐ定年ですが「600万円」しか貯蓄できませんでした。住宅ローンは完済したので、老後「家賃なし」なら問題ないでしょうか? 年金は妻と「月17万円」の見込みです
「マイホーム」を手に入れることは多くの人があこがれる夢の一つといえるでしょう。実現するために一生懸命働いて、定年前に住宅ローンを繰上げ完済するのは並大抵の努力ではないと思います。しかし返済によって貯蓄が減ると、老後資金が少なくなり定年後の暮らし方に大きく影響してきます。
 
本記事では、老後にかかる生活費や持ち家にかかる維持費などについて解説し、定年後に年金収入と貯蓄だけで暮らせるかについて検証します。
根本由佳

執筆者:根本由佳(ねもと ゆか)

FP2級、中小企業診断士

高齢者夫婦無職世帯の生活費は「約28万円」

「老後に備えて貯蓄2000万円が必要」といわれていますが、これは金融庁が2019年に発表した報告書から話題になったものです。平均的な高齢者夫婦無職世帯の場合、年金などの収入に対して毎月5万4520円の赤字が生じるため、老後を30年として5万4520円×12ヶ月×30年=約1963万円、つまり2000万円の準備が必要だと論じたものです。
 
総務省の「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」によると、65歳以上の夫婦で無職の場合の1ヶ月あたりの平均消費支出は25万959円、平均非消費支出は3万1538円とのことです。
 
年金収入が「月17万円」であるとすると、差し引いて毎月約11万2000円の赤字が生じます。この赤字の補填にこれまでの貯蓄を充てることになりますが、貯蓄が「600万円」だとすると約53か月、つまり4年半ほどで使い果たしてしまうことになります。
 

持ち家には維持費がかかる

一方、持ち家であれば毎月の賃貸料の支払いがなく、住宅ローンを完済しているならば安心して住み続けることができると思うかもしれません。しかし持ち家には以下のような維持費がかかります。

●税金
●保険
●修繕費

 

税金

持ち家には「固定資産税」「都市計画税」の2つがかかります。固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」、都市計画税は市街化区域に位置する不動産のみを対象に「固定資産税評価額×0.3%」が課せられます。固定資産評価額は各自治体が算出しており、持ち家の場所や建物によって税額は変わってきます。
 

保険

多くの一戸建て住宅では「火災保険」に加入しているでしょう。また近い将来発生が予想される大地震に備えて「地震保険」に加入する人も増えているようです。保険料は、保険商品や建物の立地・構造によって変わりますが、契約期間5年でおよそ15万~20万円が目安とされています。
 

修繕費

税金や保険料は持ち家を取得した時から支払っていますが、修繕費は築10年を過ぎたころからかかりはじめると予想される費用です。外装や屋根など大規模な修繕は築20年を過ぎたころから必要になることが多いでしょう。
 
中古物件の場合はさらに早めの対策が求められる可能性があります。適切な修繕を行うことは、取得当時の住み心地を維持するだけでなく、大切な資産としての持ち家の価値を維持することにもつながります。
 
平均的な一戸建て住宅にかかる修繕費は、トータルで600万円~800万円ほどともいわれています。もし50年住むとすれば1年あたり12万円~16万円の計算です。
 
高齢者が無職であることを理由に賃貸住宅の契約を断られることもあるため、持ち家は老後の大きな安心の1つであることは間違いありません。しかし前述のとおり、税金や保険料、修繕費などがかかるため、住宅ローンだけでなく将来の維持費も合わせて、計画的に貯蓄をしていくことが必要です。
 

まとめ

「600万円」の貯蓄で年金「17万円」の場合、平均的な支出であれば老後に家計が破綻する可能性があるといえます。そのため、これから定年までの間に貯蓄を増やせるように家計を見直す、定年後も家計を補うために再雇用など継続して働く、アルバイト・パートなどで収入を得るなど考えておくのがよいでしょう。
 
また今後、持ち家にどの程度の維持費がかかるかを計算し、修繕などの計画を立てておくことも重要です。持ち家は大切な資産です。少しでも長く安心して暮らせるように、今からしっかりと家計管理をしていきましょう。
 

出典

総務省 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)
 
執筆者:根本由佳
FP2級、中小企業診断士

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