更新日: 2024.05.17 セカンドライフ

老後2000万円問題を聞いたあと60歳で退職するのは不安です。実際には2000万円以上かかりそうな気がするのですが、いったいいくら貯めれば安心ですか?

老後2000万円問題を聞いたあと60歳で退職するのは不安です。実際には2000万円以上かかりそうな気がするのですが、いったいいくら貯めれば安心ですか?
老後2000万円問題を見聞きし、「退職するのが怖い」「今から2000万円は貯められない」「老後を迎えるにあたり、どのように準備すれば良いのか不安」という人は多いようです。
 
特に、不安を抱く部分は、いくらあれば良いのかという点です。今回は、2000万円問題の本質と、どれくらい貯めれば良いのかを考えてみます。
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

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老後2000万円問題の根拠って何?

老後の生活を送るとき、現状では2000万円程度が足りないというのが「老後2000万円問題」です。
 
とはいえ、言葉のみが独り歩きしており、どうして2000万円なのか? という部分が分からない人が多く、かえって不安を抱く結果になっているのです。
 
そもそも「老後2000万円問題」は、2019年に金融庁が発表した、金融審議会 市場ワーキング グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中に記載されている内容を受けてのものです。
 
この報告書によれば、「高齢夫婦 無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。』となっています。つまり、毎月5万円足りないということは、年間60万円が不足することになります。
 
60歳で定年退職した場合、現在の平均寿命を考えると90歳以上も存命している可能性が高くなります。そのため、30年以上の期間にわたり備えが必要であることから、不足分の総額である約2000万円を備えておくことが必要であるといわれているのです。
 

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2000万円をうのみにしてはダメな理由を知る

2000万円なら、退職金や親等からの相続財産で何とか準備できると考えている人もいるのではないでしょうか。ただ、ここで知っておくべきことは、このデータで用いられているデータは、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯となっている点です。
 
このデータでは、実収入は月額20万9198円、実支出は月額26万3718円となっています。夫婦のみの世帯であっても月々の支出がこれ以上であれば、当然さらに多くの不足額が出ますので、2000万円あれば老後資金は足りるとうのみにするのは危険です。
 
また、単身世帯の場合には、月額の収入はこれより少なくなりますので、不足分はさらに多いということになります。その他にも、家族構成、住宅ローン等の各種借入金の有無、ライフイベントの内容によっても支出額は変わってきます。
 
あくまでも2000万円はベースであり、老後資金について考えるきっかけのデータであると認識することが必要です。
 

自分に必要な貯蓄額はいくらになるのか、算出してみよう

老後を迎えるにあたり、さまざまな準備に取り組んでいる人は少なくありません。老後の生活費の不足額がいくらになるのかを考えるのも同じことです。
 
老後に必要な貯蓄額を算出するときには、収入見込み額はいくらで、想定される支出額はいくらなのかを知ることです。計算式としては非常にシンプルです。
 
「収入」-「支出」で計算し、プラスのときには、今のままでも十分に手当ができる可能性があることが分かります。
 
反対にマイナスになっているときには、その不足分は余裕を持って35年間(60歳定年退職、95歳までの期間)で割り戻して計算してみましょう。もし、不足分が3500万円だったときには、3500万円÷35年ですので、年間100万円が不足する計算になります。
 
とはいえ、支出の見直しができる可能性もありますので、一度、自分のお金の流れを把握してみてはいかがでしょうか?
 
収入については、日本年金機構の「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できますので、確認してみましょう。支出については、家賃、毎月のローンや借入金の返済額、水道光熱費、食費、趣味、レジャー費等の生活に関連する費用を確認します。
 
家賃や返済金等は、毎月決まっていますので、そのデータを使ってください。水道光熱費や食費は数ヶ月さかのぼり(3~6ヶ月)、平均値を出してください。
 
趣味やレジャーに係る費用の中でも、例えばお稽古の場合は毎月いくらかかるのかが分かると思いますので、その金額を算出してください。特に支出が決まっていない趣味やレジャー関連費の場合は、予算を決めるようにしてください。
 
その他、ライフイベントで大きな支出となる、自宅のリフォーム、子供への資金援助、マイカーの買い替え、旅行費用等を支出に盛り込んでいきます。
 
面倒のように思えるかもしれませんが、自分のお金の流れを把握し、自分にとって必要な金額はいくらになるのかを知ることが大切です。その結果を踏まえて、貯蓄計画を立てていきましょう。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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