更新日: 2024.06.04 セカンドライフ
2年後の定年で住宅ローンが「完済」します。老後破産を避けるには定年後「持ち家」と「賃貸」どちらにすべき?
持ち家は賃貸とは異なり、家賃の支払いがなく負担が軽減されるように思えます。とはいえ、家屋に関連した支出がなくなるわけではなく、ある程度お金がかかります。
場合によっては支出が大きくなり、老後破産(定年後の年金生活で支出が多くなり困窮すること)の心配が出てくるかもしれません。
本記事では、持ち家や賃貸にかかる支出をご紹介するとともに、老後破産を避けるうえでどちらがおすすめなのかについても解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
二人以上の65歳以上の無職世帯はひと月あたり3万円以上の赤字になる!?
今回のケースのように65歳で定年退職する場合、以降は年金のみが主な収入源になるパターンが考えられます。
この場合、家計の収支バランスはどのようになるのか、65歳以上の夫婦2人世帯(無職)を例に総務省統計局のデータをまとめると、表1の通りです。
表1
65~69 歳の世帯 | 70~74歳の世帯 | 75歳以上の世帯 | 平均 | |
---|---|---|---|---|
持ち家率 | 94.4% | 93.7% | 94.2% | 94.1% |
可処分所得 | 25万3273円 | 23万2550円 | 20万9882円 | 22万2725円 |
消費支出 | 29万3903円 | 26万8095円 | 23万4521円 | 25万2928円 |
収支バランス | -4万630円 | -3万5546円 | -3万5546円 | -3万203円 |
※総務省統計局「家計調査報告【家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」を基に筆者作成
65歳以上のすべてのカテゴリにおいて、消費支出が可処分所得を上回っています。平均での収支バランスは「-3万203円」であり、65歳以上の生活が赤字になる可能性を示しています。
この結果はあくまで平均的ケースであり、実際の収支バランスは世帯ごとに異なるため、もちろん黒字となる世帯も存在するでしょう。とはいえ、メインの収入源が年金のみの場合、生活資金に余裕がない可能性は十分考えられます。
持ち家にかかる費用
前述の調査対象者のうち、9割以上の住居形態は「持ち家」でした。「持ち家だと支出をおさえやすい」というイメージがあるかもしれませんが、調査結果を見ると、必ずしもそうではないようです。
持ち家を維持する場合にどのような費用がかかるかというと、以下のような項目が代表的でしょう。
・税金(固定資産税・都市計画税など)
・リフォームやメンテナンス費用
・保険料(火災保険や地震保険など)
各項目でどれくらい費用がかかるかは、住宅の評価額や状態などにより変動します。ちなみに先ほどの調査において、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における「住居」の月平均支出は「1万6827円」でした。
この金額は持ち家に住んでいない世帯を含んでいますが、調査対象世帯の持ち家率の高さを考慮すると、持ち家居住者の支出状況に近い数値とも考えられます。
賃貸にかかる費用
賃貸の場合、一般的に以下のような費用がかかります。
・初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)
・家賃
・管理費(集合住宅の共益費など)
・火災保険料
・更新料(契約更新のタイミングでかかる費用)
賃貸の場合、持ち家のように固定資産税や修繕積立金はかかりません。
一方で、毎月の家賃が発生するほか、家賃の数ヶ月分に達することもある初期費用や管理費などが発生する可能性があります。持ち家を処分して賃貸に住み替える場合、売却額しだいで、これらの費用がどれほどの負担になるかが変わってくるでしょう。
老後破産を避けるには「持ち家」と「賃貸」どちらがいい?
家賃支払いがない分、定年後の月々の住居負担は「持ち家」の方が少ない可能性があります。賃貸住宅を借りる場合に賃貸料が高い場合や、持ち家の固定資産税評価額が比較的低い場合などは、特にそういえるでしょう。
一方、持ち家の老朽化が進んでいるせいで定期的に修繕が必要だったり、後々リフォームで多額の費用がかかることが予想されたりする場合、長いスパンで見たときの維持コストは賃貸と大差ない場合が考えられます。
このようにコストを単純比較することは難しく、持ち家と賃貸どちらがいいかは一概に言い切れません。強いていうならば、以下のような判断もできるかもしれません。
・家の状態が比較的よく税金や修繕費などを十分払っていけるのであれば、持ち家
・大規模な修繕が想定されリフォーム資金の確保が容易ではないのであれば、売却して賃貸に住み替え
定年後の収支バランスや住居状況を考えて持ち家の是非を判断しよう
持ち家にするか、持ち家を処分して賃貸に引っ越すか考える際は、定年後の家計収支バランスや、住宅関連費用が月々また長いスパンでどれくらいかかるかを考慮する必要があります。
単純に考えるならば、持ち家のほうが毎月の出費をおさえやすく、老後破産を避けやすいといえるかもしれません。とはいえ持ち家の状態によっては、将来的にまとまった額のリフォーム代がかかって大きな負担を被るおそれがあるため、さまざまな角度から老後の生活設計を立てることが大切といえるでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告【家計収支編 〕2023年(令和5年)平均結果の概要(17.19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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