【老後の年金額】ずっと真面目に年金を納めてきました。定年後は夫婦で「ゆとりある暮らし」を送りたい。「今の世帯収入と同じくらいの年金収入」は無理なのでしょうか?
配信日: 2024.07.11
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
夫婦2人で「ゆとりある生活」をするためには?
生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23万2000円となっています。さらに、「ゆとりある生活」を送るための生活費としては、最低日常生活費よりも14万7000万円多い37万9000万円(平均額)となっています。
この最低日常生活費に上乗せする生活費の使い道としては、「旅行やレジャー」が60.0%と最も高く、続いて「日常生活費の充実」が48.6%、「趣味や教養」が48.3%、「身内との付き合い」が46.2%、「耐久消費財の買い替え」が31.7%となっています(複数回答)。
また、「ゆとりある生活」を送るための生活費の分布を見ると「30~35万円未満」が20.5%と最も多く、続いて「50万円以上」が18.0%、「40~45万円未満」が11.3%となっています。
年金のみで「ゆとりある生活」はできるか?
夫婦2人で年金がどれくらいもらえるのかを見て行きます。妻が専業主婦で、2人とも65歳になってから年金を受給する前提で確認します。
「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、夫の老齢基礎年金の平均受給額は月額5万6479円、基礎年金を含めた老齢厚生年金の平均受給額は月額14万5665円です。妻が専業主婦として、老齢基礎年金の平均月額5万6479円を受給できるとして、夫婦2人で受給できる公的年金は20万2144円となります。
したがって、受給できる公的年金額では、最低日常生活費の23万2000万円にも届かず、ましてや「ゆとりある生活」をするには、月額で17万6856円も不足してしまいます。この不足分を企業年金や個人年金などの私的年金で補う方法がありますが、こうした方法は若いうちから計画的に準備をしておく必要があります。
また、退職金を含めて、貯金が十分にあれば、不足分を取り崩しながら生活することも可能ですが、25年間補填することを考えると17万6856円×12ヶ月×25年=5305万6800円となり、かなりの金額となります。
ちなみに、定年退職者がもらえる退職金と企業年金の合計額は、「令和5年就労条件総合調査概況によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で、勤続年数が35年以上の場合は平均2037万円となっており、退職金などで補填するというのも、簡単ではないのが現実です。
以上見てきたように、年金のみで「ゆとりある生活」をすることは難しいことが多く、私的年金や貯金などで補填をする必要があります。また、健康であれば、継続して働くことで収入を得て、必要な額を補うというのも現実的な選択肢かと思います。
まとめ
夫婦2人で「ゆとりある生活」を送るための生活費としては、平均で37万9000万円が必要です。一方で、専業主婦家庭の夫婦2人がもらえる公的年金は、現状では20万2144円です。したがって、公的年金だけで夫婦2人で「ゆとりある生活」をすることはできません。
「ゆとりある生活」をするためには、公的年金との差額である月額17万6856円を企業年金や個人年金で補填するか、もしくは貯金や働いた収入などで穴埋めできれば、「ゆとりある生活」に近づくことができるかもしれません。
出典
厚生労働省 中央労働委員会 令和3年賃金事情等総合調査
公益財団法人 生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査結果の概要
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー