更新日: 2019.01.07 介護

自分が認知症になったら財産はどうなる?覚えておきたい後見人制度とは

自分が認知症になったら財産はどうなる?覚えておきたい後見人制度とは
我が国の今の時代背景は、少子高齢化社会と言われています。
 
高齢化が進むと加齢による認知症の数も増えてきます。
 
内閣府の「65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計(※1)」をみると、平成24(2012)年は、認知症高齢者数が462万人。65歳以上の高齢者の約7人に1人でしたが、平成37(2025)年には約5人に1人となるとの推計もあります。
 
上山由紀子

Text:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

自分が認知症になったら、財産はどうなる?

認知症になったら自分で物事を決めることができなくなります。
 
私たちが生活していくうえで日常的に行われる買い物でさえ、買う側と売る側が暗黙の契約をしています。私たちの生活の中には契約というものがついて回るのです。
 
でも、自分が認知症になり預貯金を払い出すこともできない、ましてや、自分の家を売ることもできない状態になり、自分の財産管理ができなくなるとしたらどうしますか。
 

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成年後見制度とはどんな制度?

「成年後見制度」とは、認知症などで判断能力が不十分な人を支援する制度です(※2)。
 
本人の生活、療養看護、財産管理に関する事務(後見事務)に関して、本人の意思を尊重しながら支援を行います。
 
例えば、認知症になると、不動産や預貯金などの財産の管理や、介護施設への入所に関する契約などを、自分で決めて実行することが難しい場合があります。また、悪徳商法の被害に遭うこともあります。自分に不利益だということが分からないのです。
 
このように、判断能力が不十分な人を保護して支援するのが、成年後見制度です。
 
成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあります。
 

任意後見制度とは?

「現在は判断能力があり大丈夫。だけど、将来、判断能力がなくなったときが心配…」という人が、あらかじめ自分で選んだ信頼できる人と代理人(任意後見人)契約を結んでおくのが、「任意後見制度」です。
 
手続きとしては、まず公証役場で任意後見契約(誰に何を支援してもらうかを決定する)を結びます。費用は公正証書作成手数料(1万1000円)、登記嘱託手数料(1400円)、法務局に納付する印紙代(2600円)、その他(切手代など)が掛かります。
 
本人の判断能力が低下してきたら、家庭裁判所に任意後見監督人(任意後見人が適正な後見事務を行っているかを監督し、家庭裁判所に報告をする人)に選任の申し立てを行います。
 
任意後見監督人が選任されたら、任意後見の開始になります。
 

法定後見制度とは?

「法定後見制度」とは、すでに判断能力が不十分になっている認知症の高齢者などが利用できる制度です。
 
後見制度は、判断能力の程度など、本人の事情によって制度を選べるようになっています。その制度は以下の3つです。
 
(1) 「後見」・・・自分の財産を管理・処分することができない人が対象
(2) 「保佐」・・・自分の財産を管理・処分するには常に援助が必要な人が対象
(3) 「補助」・・・自分の財産を管理・処分するには援助が必要な人が対象
 
では、それぞれの支援をする人(家庭裁判所が選びます)には、どんな権限があるのでしょうか。
 
(1) 「後見人」には、代理権が与えられています。本人の利益を考え、本人を代理して契約などの法律行為をし、本人がした不利益な法律行為をあとから取り消すことができます。
 
(2) 「保佐人」は、本人がお金を借りたり保証人になったり、不動産を売買するなど法律で決められた一定の行為について、保佐人の同意が必要となります。また、保佐人の同意を得ないでした行為については、あとから取り消すことができます。代理権の付与に関しては、審判の申し立てと本人の同意が必要です。
 
(3) 「補助人」には、家庭裁判所の審判によって、同意権・取消権や代理権を与えることができます。ただし、本人の同意が必要です。
 
(注)代理権・・・本人に代わって契約等をする権限
同意権・・・本人が行う契約等に同意する権限
取消権・・・本人が行った契約等について取り消す権限
 
ただし、自己決定尊重の観点から、日用品の購入など、日常生活に関する行為については取消権の対象にはなりません。
 
なお、法定後見の開始を家庭裁判所に申し立てる際に確認すべき事項は、以下のとおりです。
 
「申し立てできる人」
本人、配偶者、4親等内の親族など、検察官、身寄りのない人の場合は市町村長
 
「必要なもの」
申立書・戸籍謄本・住民票・診断書など
 
「費用」
申立手数料・・・1件800円の収入印紙
登記手数料・・・2600円の収入印紙
通信費・・・連絡用の切手(各家庭裁判所で異なります。)
鑑定料・・・個々の事案によって異なりますが、ほとんどの場合10万円以下になります。
 
また、申立書の作成や申し立て手続きを司法書士か弁護士に依頼することで報酬が発生します。

 

まとめ

私たちが老後を迎えるにあたって、考えなければならないことがあります。
 
それは、自分がどこで、誰と、どんな暮らしがしたいのかということです。それを実現するためには、将来のライフプラン、マネープランの計画をたてることが大切です。
 
今回は認知症に関する「成年後見制度」の内容を知っていただきましたが、これを活用して、安心できる老後を送っていただければ幸いです。
 
出典
(※1)内閣府 平成29年度高齢者白書(概要版)
(※2)法務省 成年後見制度~成年後見登記制度~
 
Text:上山 由紀子(うえやま ゆきこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

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