更新日: 2024.09.26 その他老後
「貯蓄に余裕があるから」と両親が年金の受け取りを70歳に繰下げするようです。もしものことを考えると、損をしないか心配です…
しかし、繰下げ受給をすると親が受取総額で損をするのではと不安を覚える子どももいるでしょう。今回は、繰下げ受給の概要と何歳までに受け取ったら得なのかなどについてご紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、本来受給開始する年齢である65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で、繰り下げて年金を受け取れるようにする制度です。
繰下げ受給を利用すると、繰り下げた月数によって0.7%ずつ受け取れる年金額が増加していきます。例えば、年金受給額が年間150万円の方が70歳まで繰り下げると42%増加し、213万円を受給可能です。
日本年金機構によれば、繰下げ受給を利用するためには、66歳以降で年金を受け取りたい時期に「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターへ提出する必要があります。
年金の増加率は、手続きを行った時点で決定するため、申請時期には注意が必要です。もし、70歳まで待ってから受け取りたい場合でも、早めに提出すると70歳になる前の増加率で計算される可能性があります。
なお、65歳時点で受け取るはずだった年金額を、あとから請求することも可能です。ただし、日本年金機構によると、70歳を過ぎると申請から5年前の日時点で繰下げ受給をしたとして計算され、一括で年金が支給されます。
一度に過去の年金を受け取ると、税金や保険料などに影響するケースもあるため確認が必要です。自身に影響があるか分からない場合は、年金事務所に問い合わせておきましょう。
繰り下げしなかったときよりも受給総額が高くなるのはいつ?
繰下げ受給は、1年繰り下げるごとに受給額が8.4%ずつ増加していきます。最初は65歳から受け取っていた方のほうが受給総額は多くなりますが、最終的には繰下げ受給をした方のほうが受給総額は多くなるでしょう。今回は、以下の条件で受給総額の変化を比較します。
・65歳時点で老齢厚生年金は100万円、老齢基礎年金は50万円の合計150万円を受給できる
・65歳で退職しており、これ以上厚生年金の加入期間が増えることはない
・年金は老齢厚生年金・老齢基礎年金ともに繰下げ受給で70歳から受け取ることとする
条件を基にしたときにおける受給総額の変化は表1の通りです。
表1
年齢 | 65歳で受給 | 70歳で繰下げ受給 |
---|---|---|
65歳 | 150万円 | 0円 |
70歳 | 750万円 | 213万円 |
75歳 | 1500万円 | 1065万円 |
80歳 | 2250万円 | 2130万円 |
81歳 | 2400万円 | 2343万円 |
82歳 | 2550万円 | 2556万円 |
83歳 | 2700万円 | 2769万円 |
84歳 | 2850万円 | 2982万円 |
85歳 | 3000万円 | 3195万円 |
※筆者作成
結果を見ると、通常の受給総額よりも繰下げ受給の総額が上回るのは、82歳です。そのため、80代まで年金を受給すれば、損をせずに済むでしょう。
厚生労働省の「令和5年簡易生命表の概況」によると、日本の平均余命(寿命)は男性が81.09歳、女性が87.14歳、男女合計だと平均84.115歳です。平均寿命から考えると、70歳まで繰下げ受給をしても損をする可能性は低いと考えられます。
65歳から70歳までで必要な貯蓄はいくら?
総務省統計局が公表している「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上で夫婦のみの無職世帯における平均消費支出は平均で月に25万959円、税金や社会保険料などの非消費支出は月に3万1538円のため、毎月28万2497円が必要です。
仮に他に収入がなく、1年間上記の金額が不足すると338万9964円、65~70歳までの5年間で1694万9820円が不足します。不足分は貯金から補うため、急な出費の可能性も考慮すると、65歳の時点で1700万~1800万円ほどの貯金があれば、70歳まで繰り下げても問題なく生活できる可能性があるでしょう。
繰下げ受給で70歳から年金を受け取る場合、年金総額は80代ごろ通常よりも多くなる
繰下げ受給は、年金の受給タイミングを66歳以後にずらすことで、受け取れる金額を増やせる制度です。繰下げ請求書を年金事務所などに提出することで、利用できます。
今回の試算では、もし70歳まで繰下げ受給をすると、82歳には繰下げ受給をしなかったときよりも年金総額が多くなるため、長生きすればするほど得をすると考えられるでしょう。
繰下げ受給中の両親の生活費に不安を覚えるなら、1800万円ほどの貯金があるか確認しておきましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命(2ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編] 2023年(令和5年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支-2023年-(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー