更新日: 2024.10.21 定年・退職
会社の先輩が役職定年を迎えていました。役職定年ってどのような制度なのでしょうか?
本記事では役職定年の制度や、役職定年をすることで起こり得る実態を紹介します。
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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役職定年とは?
役職定年について、人事院の定義を見てみます。「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」には、このように記されています。
「役職定年制」は、役職段階別に管理職がラインから外れて専門職などで処遇される制度であり、大手企業では1980年代以前から導入した企業もあるが、おおむね1980年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に際して、主に組織の新陳代謝・活性化の維持、人件費の増加の抑制などのねらいで導入されたケースと、1990年代以降に職員構成の高齢化に伴うポスト不足の解消などのねらいから導入されたケースが多いとされている。
(出典:人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」)
少し分かりやすくすると、55歳や57歳を部長など役職の定年として、以降は仕事の内容を同格または格下の専門職にする制度です。役職から外れますので、年収は下がってしまうのが一般的です。役職者に比べると追う責任は軽減されるかもしれませんが、実際の仕事内容はあまり変わらず、お給料が減ってしまうのが実情です。
この役職定年制度は、「わが社では行っていない、耳慣れない」という方もいます。どのくらいの企業が導入しているのかは下記の図表のとおりです。
(図表)
年々制度の導入は減少傾向にありますが、大企業では世代交代の役割も担っているようです。
役職定年を迎え「こんなはずじゃなかった! 」
大企業に勤めるAさんと出会ったのは彼が56歳の時で、 すでに55歳で役職定年を迎えていました。相談内容は、役職定年時に受け取った退職金が想定より少なく、当初は住宅ローンの完済に充てる予定だったのに、返済できずにいること。お給料が減ったのに日常生活を変えられずにいるため、毎月の収支が赤字になっているので、ローンの完済よりも手元に資金を置いておきたい気持ちが先行していること、などでした。
役職は解けたものの、ほぼ同じ仕事の内容をこなしているなら、生活習慣も変わっていないはずです。ということは、日々のお付き合い等は継続されますので支出を減らすには、かなりの工夫や努力が必要です。
60歳までは今の条件で、さらに65歳までは条件は変更されるものの働くことは確約されているとのことなので、それらを踏まえて収支のシミュレーションをいくつか作りました。
不透明だった数字が可視化されたことで、Aさんのモチベーションは上がり、熱心に家計管理する変貌ぶりには驚かせられました。お金の使い方を変える一環として飲み代を減らし、マラソンを始められたことは意外でした。市民マラソンでの完走を目指し、見事に達成。これは長く続けられる趣味として、仲間もできたそうです。早朝の練習は健康にも良いことはいうまでもありません。
人事院のホームページ(第1章 定年後を考える)に、役職定年後の生活について記述があるのでご参照ください。個人的にはネガティブな印象ですが、生活環境を変える機会になると思います。Aさんのように新しい居場所を作ることで、仲間ができたり、知らない世界が広がったりすることもあります。役職定年をチャレンジのきっかけとして前向きに捉えるのが肝要です。
出典
人事院 民間企業における役職定年制・役職任期制の実態
人事院 民間企業の勤務条件制度等調査 平成29年度
人事院 第1章 定年後を考える 1 定年がもたらすもの
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士