介護保険制度を分かりにくいと感じていませんか? 介護老人「保健」施設と介護老人「福祉」施設の違いについて解説
配信日: 2024.11.03
介護保険制度を理解するには、老後の生活設計において、まず「どこで暮らすか」をある程度イメージする必要があります。
本記事では介護保険制度を理解するに当たり、介護が必要になった場合に利用できる施設について解説していきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
介護保険制度が分かりにくい原因は、言葉の問題
おそらく一般的には、介護施設というと「老人ホーム」が頭に浮かぶかもしれません。このときの老人ホームのイメージは、いわゆる「特別養護老人ホーム(特養)」を指すことが多いようですが、多かれ少なかれ「施設に入所して何らかの身体介助を受ける」という漠然としたイメージではないでしょうか。
このように、介護保険制度を分かりにくくしている原因の一つとして、言葉の問題が挙げられます。
先ほどのように、多くの人に「介護施設≒老人ホーム≒特養?」といったイメージがあることが多いため、自分がどのような介護サービスが受けられるか、理解する前の段階で、よく分からなくなってしまいます。
このため、まず、介護サービスを受ける場所について知る必要があります。ポイントは前回の記事でも言及したように「在宅か、施設か」の2択であり、介護保険制度を理解するに当たり、本記事ではまず「施設介護」について取り上げます(在宅介護については、このシリーズの最後に言及する予定です)。
介護老人「保健」施設と、介護老人「福祉」施設という言葉の違い
いわゆる介護施設について理解しようとする場合、介護老人「保健」施設と介護老人「福祉」施設、という言葉の違いに着目すると、分かりやすくなります。前者には「保健」という言葉が付されており、後者には「福祉」という言葉が使われています。
簡単にいうと、ここでいう保健施設とは「施設内に医師がいて、リハビリを受けながら生活する場所」という意味です。一方、福祉施設は単に「生活する場所」を指します。
つまり、介護老人保健施設は、介護が必要な方が医師の診療に基づきリハビリを受けながら暮らす場所で、介護老人福祉施設は、介護が必要な方が生活をする場所、という意味になります。
介護老人保健施設はもともと老人保健法から創設しており、介護老人福祉施設は老人福祉法から生まれたものであるため、このような違いが生じています。また、両者は共に介護保険法に規定されるものでもあるので、介護保険サービスが受けられるようになっています。
介護老人「保健」施設と介護老人「福祉」施設のイメージ
それでは、もう少し具体的な利用の場面を例に、理解を深めていきましょう。
一般に、介護老人保健施設は在宅復帰を目指すもので、介護老人福祉施設は長期的な生活の場と考えることができます。
分かりやすい例を挙げるならば、介護老人「保健」施設は「脳梗塞などが原因で手足がまひしてしまい、リハビリを継続して受けることが必要になった患者が、退院後に入所し暮らす施設」というイメージです。
これに対し、介護老人「福祉」施設は、「身体機能が衰え、自立して生活することが難しい老人が、介助を受けながら暮らす施設」と考えれば、分かりやすいかもしれません。このようなことから、介護老人「福祉」施設のほうが、一般的な介護施設のイメージに近いといえるでしょう。
まとめ
今回の話は、介護施設の種類を大別するための、非常にざっくりとした話です。細かい部分まで理解しようとすると分かりにくくなるため、詳細については言及していませんが、対象とする利用者や設置基準、入所期間、利用できるサービス内容などの違いがあります。
老後の生活設計を絡めたポイントは、「施設の違いによってどのような生活シーンを想定するか」ということです。読者のみなさんが大まかに想定するのであれば、介護老人保健施設での暮らしは医療と介護が支え、介護老人福祉施設での暮らしを支える基盤は介護である(正確には、介護を受けながら病院を受診するなど)といったイメージでよいでしょう。
このような大まかな違いが分かるだけでも、介護保険制度への理解が進むのではないでしょうか。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)