勤続30年で退職金「1500万円」を年金で受け取る予定です。同期は「一括のほうが税金がかからなくてお得」と言いますが、大金なのに本当でしょうか?
配信日: 2025.01.18
本記事では、退職金の受け取り方法について、一括受け取りと年金受け取りの違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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退職金の受け取り方法:一括受け取りと年金受け取りがある
退職金の受け取り方法は大きく分けて「一括受け取り」と「年金受け取り」の2種類です。その名のとおり、「一括受け取り」は退職金の全額を一度にまとめて、「年金受け取り」は退職金を分割して年金のように定期的に受け取る方法です。
なお、退職金の受け取り方法は各企業の退職金制度によって決まります。自分がどのような受け取り方法ができるのかは、企業ごとに定められた退職金規程などを確認しましょう。
一括受け取りの場合、退職所得控除で税負担がゼロに?
一括受け取りの場合、退職金には「退職所得控除」が適用されます。この控除は勤続年数に応じて計算され、所得税や住民税の負担を大幅に軽減できます。退職所得控除額の計算方法は次のとおりです。
・勤続20年以下:勤続年数×40万円
・勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
今回のように、勤続30年の人の退職金控除額は次のとおりです。
800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円
そして、退職金の総額から控除額の1500万円を差し引いた残額のさらに半分が課税対象として、所得税の税率が課されます。
つまり、本記事のように、勤続30年で退職金1500万円の場合課税対象額がゼロとなり、所得税はかかりません。
年金受け取りの場合の税金
年金受け取りでは、受け取る金額が「雑所得」として扱われます。毎年の課税対象額が少なくなるため、一度に多額の税金を払う必要がないところは利点です。ただし、退職所得控除のような大幅な優遇措置はありません。
退職金を一括で受け取る場合のメリット・デメリット
退職金を一括で受け取る場合のメリットとしては、前記したとおり税制面での優遇が大きい点が挙げられます。退職所得控除が適用され、課税対象額が大幅に軽減されるため、所得税がゼロになるケースも多いでしょう。
また、資金を一度に受け取れるため、例えば住宅ローンを完済したり、自身の判断で一括で資産運用したりといったことも可能です。
一括で受け取る場合にはデメリットも知っておきましょう。一括で受け取った場合、計画的に運用しないと、大金を短期間で使い切ってしまう可能性があります。
また、公的年金や再雇用などで定期的な収入源を確保していないと、安定した定期的な収入が得られないリスクもあります。
退職金を年金で受け取る場合のメリット・デメリット
退職金を年金で受け取る場合のメリットとしては、老後に定期的な収入源が得られるため、生活費の計画が立てやすい点が挙げられます。また、一度に使い切る心配がないため、資金を長期間にわたり確保できます。
デメリットですが、年金形式では雑所得に分類されるため、一括で受け取った場合のような退職所得控除のような優遇はありません。また、大きな出費が必要な場合にまとまった資金を用意しづらい可能性もあるでしょう。さらに、短命で受け取り期間が短くなると、トータルの受給額が少なくなることも考えられます。
まとめ
退職金を一括で受け取るのか、年金で受け取るのかについては、正解はありません。とはいえ、まとまった資金が必要な人や、大きな控除を受けたい場合には一括受け取りが適しています。
一方、老後の生活費を安定的に確保したい人は、年金受け取りが安心できるでしょう。それぞれの特性を理解し、自分のライフプランや経済状況に合った受け取り方法を選びましょう。
出典
国税庁 退職金と税
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー