リバースモーゲージとリースバック 2つの違いを押さえよう
配信日: 2019.03.14 更新日: 2019.06.21
2つの違いを知ることで、それぞれの仕組みの理解が深まります。「比べると分かりやすい」こともあります。
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
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不動産の活用法 リバースモーゲージの仕組み
シニアの皆さんと話していて「老後資金が不安」という声は多いです。寿命が延びて生活資金が足りなくなるのでは、要介護の生活が長くなったらどうしよう、と悩みは尽きません。最近、資金調達の手段として注目されているのが、自宅不動産を使った方法です。
「リバースモーゲージ」と「リースバック」は資金を調達する方法ですが、ともに自宅に住み続けることが出来るのが特徴です。“資産は自宅不動産と少しの預金”という場合、資金不足になったら不動産を売却することになります。自宅を手放したら、引越しを考えなければなりません。
前向きに住み替えるのであれば嬉しいですが、「お金が足りなくなったので、引越しをする」というのは、心細いものです。住み慣れた環境を変えることは、精神的な負担も大きいです。ご近所づきあい、買い物や病院など、「今」の日常生活はなるべくそのまま続けたいと願うのが一般的です。それを叶える方法として、この2つが注目されているのです。
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りる方法です。“返済する余裕はありません”という場合も借り入れが出来ます。契約者の死亡時に、担保になっている不動産を売却することで精算します。相続人がローンを返済すれば、不動産は相続財産として残ります。金融機関によって条件は変わります。
概ね55歳以上の方が利用でき、融資金額は担保評価額の50%以内です。使い道が限定されている場合もありますので、金融機関を選ぶ際のチェックポイントになります。
これ以外のポイントは次の通りです。
<融資方法>
(1)利用限度枠内で自由に引き出しタイプ
(2)年金タイプ
(3)一括タイプ
<返済方法>
(1)毎月返済は無し(死亡時に利息分も含めて返済)
(2)毎月返済は有り(利息のみを毎月返済)
どのタイプが自分に合っているのかが分かれば、取引する金融機関を選ぶ材料になります。
このように自宅を担保に現金を手にすることが出来ますが、注意点もあります。通常適応金利は変動金利なので、金利が上昇した時に利用限度額が減少したり、毎月の支払利息が増えたりする可能性があります。
また、担保となっている不動産の評価額が下がった場合、融資限度額が減額になるということも考えられます。返済金額が利息分だけ、あるいは毎月の返済はしなくてよいということで、「借りやすい」状況にありますが、長期間続けていると限度額に達してしまう恐れがあります。
やはり「長生きのリスク」を念頭に置き、借入計画は入念にしなければなりません。
死亡時に精算ということで、相続財産に担保が設定されることになりますので、推定相続人に「同意書」を求める金融機関が多いことも留意点です。リバースモーゲージを利用することについて、事前に家族で話し合うことが大切です。
リースバックの仕組み
リースバックも“自宅に住み続けることが出来る”点は似ていますが、こちらは不動産を売却して資金を調達します。売却しますので所有権はなくなり、その物件を借りて(家賃を払って)住み続けることになります。売却代金は一括で受け取りますので、大きな資金を調達することが出来ます。
(1)住宅ローンや他の借入があるので、それらを完済してスッキリさせたい。
(2)近い将来、住み替えを考えているので、購入資金を待機させておきたい。
(3)子どもがいない、もしくは子どもがいても将来実家に帰る予定がないので、資産は流動性を優先したい。
こうした場合にも利用しやすいです。所有権は無くなりますので、子どもに相続させることは出来ません。
「どちらを選んでも、最終的には不動産を手放すことになるのでは」という疑問があります。リースバックは売却することをスタートにしていますが、買い戻すことも可能です。また、リバースモーゲージは、10年以上取り扱っている金融機関に興味深いデータがあります。
契約者の死亡時に、自宅と返済はどのようになったかというと、約半数が契約者の残した金融資産や相続人の手持ち資金等により現金で完済されています。自宅不動産は残ったということです。
終活という言葉があります。不動産が負動産になっている事例もあります。自宅不動産の終(しま)い方を含め、活用法を家族で話すことが大事だと考えます。
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士