更新日: 2019.06.12 セカンドライフ
ゆとりある老後生活を望むなら、貯蓄額4200万円?
では、年金生活に入る前に準備しておくべき貯蓄は一体いくらなのでしょうか。平均寿命が年々延び、我々は長生きリスクも背負っています。
また、年金が支給される年齢は、現段階では一般に65歳からですが、少子高齢化が進み、年金財政も厳しい中で、今後70歳からなどに繰り下がるリスクや年金額自体が減少する可能性もあります。
リタイア後の生活や住宅ローンの一括返済などに一役買っていた退職金も、支給される会社が少なくなる、或いは支給額も減る傾向にあります。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
まずは年金額の把握
リタイア後は年金が収入の大黒柱となるので、およそいくらくらい支給される見込みなのか、各自のケースについて知っておくことが重要です。ねんきん定期便は、毎年誕生月に送られてきますが、これまで支払った年金保険料の金額に見合う現時点での年金額が記載されています。
若いかたは特に、今後も何十年と年金保険料を払い続けるので、ねんきん定期便の数字だけでは65歳時点でいくらもらえるのか正確な金額が把握しづらいので、日本年金機構のサイト「ねんきんネット」へ登録することをお勧めします。
ねんきんネットに登録すると、現在の仕事のまま年金保険料を支払う場合や、転職して収入が減った場合など、様々な仮定に基づいて65歳時の年金額を試算することができます。
参考までに、総務省「家計調査」(2016年)によれば、世帯主平均年齢73.2歳の二人以上の無職世帯の実収入平均は月約21万円です。
現在の支出(生活費)を確認
次に現在の支出がいくらなのか、把握しておく必要があります。
家計簿をつけているかたは簡単に導きだせるかもしれませんが、家計簿をつけていないかたも、およそいくらくらい月平均で使っているか、数か月だけでも記録してみましょう。これに基づいて、老後の費用を見積もります。
老後の費用は、一般に65歳以降の費用と考えます。その頃子供が独立していると考えられれば、子供の教育費や食費などの費用を除きます。現在4人家族で、老後は夫婦二人の生活費を見積もりたい場合は、暫定的に現在の生活費の8割程度を見込んでもよいでしょう。
生活費は、住んでいる地域や生活レベルによっても大きな差がありますが、老後の高齢夫婦無職世帯の支出の平均は、総務省「家計調査」(2016年)によると月約24万円です。旅行やレジャーなどを含めるゆとりある生活費(生命保険文化センター、平成28年度)の平均金額は、月約35万円になります。
上記の収支でマイナスになると、それが最低必要な貯蓄額
上記の年金額から支出額(年額)を引きます。
数値がマイナス、つまり不足額があれば、それが一年間に貯蓄から取り崩さなければいけない金額です。
それが何年間必要かは、何歳まで生きるかということになりますが、実際いくつまで生きるかは、正直誰にもわかりません。平均寿命までとするのが一つの考え方です。
または、男女の平均寿命が異なるため、夫婦二人でおおまかに計算する場合は、夫90歳まで、更に余裕を持たせるなら夫100歳までを見込むという考え方もあります。
例えば、上記総務省「家計調査」のケースでは、
実収入平均 月21万円 - 支出平均 月24万円 = △月3万円 (年額△36万円)
となります。
これを、仮に65歳~90歳までの25年間を計算すると、
年額不足額 △36万円 × 25年 = △900万円
となり、65歳時に必要な生活費補てんのための貯蓄額は、900万円になります。
ゆとりある生活を望む場合は、月35万円の支出になるので、
実収入平均 月21万円 - 支出 月35万円 × 12月 × 25年 = △4,200万円
となり、老後に必要な費用は4,200万円となります。
最低必要額以外に必要なものは?
気を付けなければいけないのは、上で計算した金額は、あくまでも「生活費」に必要な貯蓄額です。それ以外にも、以下が必要になると思いますので、上記金額に適宜下記を加えてみてください。
・医療費
・家の修繕費、または有料老人ホームなどの入居金
・親の介護費用 など
老後の費用を見積もるには、老後どのような生活をしたいか、その生活レベルによって大きく変わってきます。理想とする生活を目指して、その金額を用意する努力をしていくのもよいですし、逆に生活レベルを徐々に縮小していくことができれば、目標金額が達成できなくても必要以上に悲観しなくてもよいかもしれません。
TEXT:岩永 真理 (いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
http://www.iwanaga-mari-fp.jp/