更新日: 2020.11.06 介護
介護休業と介護休暇の違いは? 知らないと損する両制度の活用方法
家族が要介護になっても仕事が続けられるように、仕事と介護の両立を支援する制度があります。その1つに、介護休業と介護休暇があります。似たような制度なので、間違った活用をされがちです。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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介護休業とは
介護休業は、要介護の対象家族1人につき、通算93日まで3回を上限に分割して休みを取得できる制度です。入社1年未満の労働者などは対象外になる場合があります。
対象となる家族は、「2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態(要介護2以上またはそれに準じた状態)となった」家族で、対象家族の範囲は、被保険者の配偶者(事実婚含む)、父母(養父母含む)、子(養子含む)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。同居の有無、扶養関係の有無は問われません。
介護休業を取得するには、原則として、介護休業取得開始予定日の2週間前までに、会社に書面で申し出ます。会社は、事業繁忙などを理由に申し出を拒否することはできません。
介護休業中の賃金の支払い義務はありません。ただし、雇用保険から介護休業給付金(賃金の67%)が支給されます。介護休業給付金は、介護休業終了日の翌日から2カ月を経過する日の属する月の末日までに会社を経由してハローワークに申請します。
介護休暇とは
介護休暇は、要介護の対象家族1人につき、年に5日まで(2人以上であれば10日まで)、1日単位または半日単位(2021年1月より1時間単位)で取得できる休暇制度です。対象となる家族や範囲は介護休業と同じです。
介護休暇を取得するには、原則、事前に申し出ます。口頭でも構いません。なお、休暇取得当日に電話で申し出て、事後に書面で提出することも可能です。会社は、事業繁忙などを理由に申し出を拒否することはできません。
介護休暇中の賃金の支払い義務はありません。
介護休業と介護休暇の活用方法
■介護休業の活用方法
介護休業は仕事と介護の両立の環境を整えるために活用します。
例えば、親が脳卒中で病院に緊急搬送され、手術、リハビリを経て退院することになった場合、退院後の介護生活を視野に入れて、家族はさまざまな準備をしなければなりません。介護保険サービスを利用するための申請、サービス事業者の選定、サービス実施の立ち合いなど。
これらは時間もかかり精神的にも負担です。仕事と並行しながら行うのはきついです。そこで、一定期間休みをとってもらい、介護の環境を整えることに専念できるように介護休業制度があります。また、経済的にも支援するため介護休業給付金が支給されます。
■介護休暇の活用方法
介護休業は、必要な時に機動的に取得できるという特徴があります。「親が緊急入院することになり病院へ行かなければならなくなった」「親が体調を崩し急に病院に付き添うことになった」「ケアマネジャーとの打ち合わせに平日出席することになった」などに活用します。
介護休業と違って、公的な所得補償制度がないので、これらの休暇のために年次有給休暇を使うのも選択肢の1つです。ただし、年次有給休暇は会社から時季変更を求められる場合があり、その日に休暇がとれないこともありますので注意してください。
まとめ
仕事と介護の両立の環境を整えるために一定期間休むのが介護休業です。一方、必要な時に機動的に休めるのが介護休暇です。それぞれの特徴を踏まえ、両制度を上手に使いわけることが大切です。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。