更新日: 2020.06.03 その他年金

家計の収入が減少。年金保険料を免除する方法はありますか?

執筆者 : 辻章嗣

家計の収入が減少。年金保険料を免除する方法はありますか?
新型コロナウイルスが猛威を振るっており、緊急事態宣言が全国に発出されました。その影響で失業した方や所得が大幅に減少した方にとって、社会保険料の支払いは大きな負担になります。そこで、今回は国民年金の保険料を免除する方法などについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

国民年金の保険料免除と納付猶予制度とは?

経済的に納付することが困難な方は保険料免除・納付猶予制度を利用することができます。

1.国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度とは

日本に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者や農業者およびその家族、ならびに学生や無職の人などは、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納付する義務があります。
 
しかしながら、失業などで収入が途絶えた、所得が少ないなどの理由で、保険料の納付が困難な場合があると思います。このような場合には、保険料未納の状態にすることなく、保険料を免除する制度と納付を猶予する制度がありますので、利用することをお勧めします(※1)。
 
【保険料免除制度】
保険料免除制度とは、前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の方や失業した方などが、申請を行い承認されると保険料の全額またはその一部を免除する制度で、免除される額は全額、4分の3、半額および4分の1の4種類となります。
 
【保険料納付猶予制度】
保険料納付猶予制度とは、20歳から50歳未満で、前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の方が、申請を行い承認されると保険料の納付を一定期間猶予される制度です。

2.保険料免除・納付猶予制度の対象となる方とは

保険料免除や納付猶予制度の対象となるのは、具体的に以下のような場合です。
 
【自営業者やアルバイトなどの方】
自営業者やアルバイトなどで厚生年金に加入されていない方は、ご本人に加えて世帯主とその配偶者の所得について審査し、【表1】の所得基準を満たしていることが条件となります(※1)。
 
【学生の方】
大学や専門学校などの学生の方は、保険料免除と納付猶予制度を利用することはできず、学生納付特例制度を利用することになります。学生納付特例は、学生本人の所得について審査し、【表1】の所得基準を満たしている場合、在学中の保険料の納付が猶予される制度です(※2)。
 
したがって、学生の親などが学生の保険料を学生に代わって納付していた場合、親の収入が減ったとしても保険料免除や納付猶予制度は使えませんので、改めて学生自身が学生納付特例の利用を申請する必要があります。
 
【失業した方】
会社などを退職した方や、事業の廃止(廃業)または休止などで失業した方は、特例により保険料免除や納付猶予制度を利用することができます。この場合は、世帯主とその配偶者の所得について審査し、【表1】の所得基準を満たしていることが条件となります(※1)。
 
【表1】

3.保険料免除・納付猶予制度を利用するメリットとは

国民年金の保険料を支払うことが難しいにもかかわらず、保険料免除・納付猶予制度を利用せずに、未納を続けていると、この間にけがや病気で障害が残ったときの障害基礎年金や死亡したときの遺族基礎年金を受け取ることができません。
 
また、老齢基礎年金の受給資格を得るための受給資格期間にもカウントされませんので、老齢基礎年金の受給資格要件を満たせず年金を受け取れなかったり、年金額が大幅に少なくなったりする可能性があります。
 
一方、保険料免除・納付猶予制度を利用していれば、その間に不慮の事態が発生した場合は障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができるとともに、老齢基礎年金の受給資格期間に含めることができます。
 
また、保険料免除の場合は、その免除された期間について、免除された割合に応じて全額納付した場合の1/2から7/8、老齢基礎年金が支給されます。なお、一部免除された場合は、納付すべき一部の保険料を納付する必要があります。
 
また、保険料の納付猶予を受けた場合は、保険料を追納しない限り老齢基礎年金額には反映されません。
 
【表2】

4.新型コロナウイルス対策の影響による収入減少には特例が認められる場合も

今般、新型コロナウイルス感染症に関して緊急事態宣言が発令されたことにより、失業した方や、事業を廃止(廃業)または休止した方などで、一時的に国民年金保険料を納付することが困難な場合は、一定の要件に該当すれば、国民年金保険料の免除が適用されることがあります(※3、4)。
 
該当される方は、お住まいの市区町村役場またはお近くの年金事務所にお問い合わせください。

5.保険料免除・納付猶予を受けるための手続き方法と保険料の追納

保険料免除・納付猶予制度を申請する場合は、年金手帳(または基礎年金番号通知書)などの必要書類を添えて申請書をお住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口に提出してください。
 
また、保険料免除・納付猶予を受けた期間の保険料については、10年以内であれば後から納付(追納)することにより保険料納付期間として取り扱われるようになるため、老齢基礎年金の年金額に反映させることができます(※5)。

まとめ

収入が減って国民年金の保険料を納めることが困難になった場合は、放置して保険料未納の状態を続けることなく、速やかに保険料免除または納付猶予の申請を行いましょう。また、収入が回復した際には、保険料を追納することも検討しましょう。
 
[出典]
(※1)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
(※2)日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」
(※3)日本年金機構「新型コロナウィルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
(※4)日本年金機構「簡易な所得見込額の申立書(臨時特例用)」
(※5)日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士


 

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