更新日: 2020.12.10 厚生年金

厚生年金の適用拡大、フリーランスにどんな影響がある?

執筆者 : 伏見昌樹

厚生年金の適用拡大、フリーランスにどんな影響がある?
働き方改革が叫ばれている昨今、厚生年金の適用拡大が予定されています。そこで、厚生年金の拡大とはどのようなものか、フリーランスの方にはどのような影響が出るのかについて解説します。
伏見昌樹

執筆者:伏見昌樹(ふしみ まさき)

ファイナンシャル・プランナー

大学卒業後公認会計士試験や簿記検定試験にチャレンジし、公認会計士試験第二次試験短答式試験に合格や日本商工会議所主催簿記検定1級に合格する。その後、一般企業の経理や県税事務所に勤務する。なお、ファイナンシャル・プランナーとして、2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP合格した後、伏見FP事務所を設立し代表に就き今日に至る。

厚生年金の拡大とは?

厚生年金の拡大によって、厚生年金の適用を受ける要件が一部改正されます。そこで、厚生年金の適用要件を確認しながら改正部分について解説していきます。
 

企業規模の要件

企業規模に関する要件は、2016年10月からは従業員数501人以上の規模でしたが、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上になります。これによって、小規模企業の従業員に対する厚生年金の適用が受けやすくなります。
 

従来の従業員の要件

従来の従業員要件は、正規従業員またはフルタイム従業員であること、週の所定労働時間数および月の所定労働日数が正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイトなどです。
 

新たに拡大された従業員の要件

所定労働時間数および所定労働日数が正規従業員の4分の3未満であっても、以下の4つの要件を全て満たす従業員は、厚生年金の被保険者になります。
 

4つの要件
  • (1)週の所定労働時間が20時間以上であること
  • (2)雇用期間が2ヶ月超見込まれること
  • (3)賃金月額が8万8000円以上(年収換算で約106万円以上)であること
  • (4)学生でないこと

 
これらのうち、(2)の雇用期間については2022年10月から適用されるものとなります(現行では1年超の見込みとなっています)。
 

フリーランスの人はどうなる?

以上のように2022年10月以降、段階的に厚生年金の適用者が拡大されます。それでは、フリーランスの方はどのようになるのでしょうか?
 
結論をいえば、フリーランスの方本人には何ら変わりがありません。なぜなら、フリーランスの方は第1号被保険者であり、今回の改正が予定される厚生年金は第2号被保険者に対してのものであるためです。
 

家族の働き方への影響は?

厚生年金の適用拡大は、家族の働き方によって影響が出ます。そこで、いずれの場合も妻がパートタイムで働いているとして、(1)夫が会社員または公務員の場合と、(2)夫がフリーランスの場合での影響の違いについて見てみます。
 

会社員または公務員の場合

会社員または公務員の場合、妻がパートタイムで働いていても厚生年金の加入条件に合致しなければ第3号被保険者となり、社会保険料を納める必要はありません。しかし、厚生年金加入の要件を満たす働き方をした場合には第2号被保険者となり、社会保険料を納める必要があります。
 
前述のように厚生年金の適用拡大がなされると、従前は第3号被保険者だった人が、第2号被保険者になる可能性があります。このため、夫の扶養から外れて社会保険料も一部支払うことになるため、家計全体の手取り額が減少する場合があります。しかし、第2号被保険者になると将来受け取れる年金額が増えることになります。
 

フリーランスの場合

フリーランスの場合は前述のように第1号被保険者になり、その配偶者も第1号被保険者になるので社会保険料も自分自身で支払う必要があります。
 
妻がパートタイムなどで厚生年金が適用される要件で働いている場合には、第2号被保険者になります。この場合は社会保険料を会社と折半して支払い、将来受け取れる年金が増えることになります。
 

まとめ

厚生年金の適用拡大は、パートタイムで働いている方には働き方に影響を及ぼす可能性があるといえます。これに対して、フリーランスの人については、被保険者の区分が変わるわけではないため、本人に対して影響はありません。
 
しかし、家族にパートタイムで働いている人がいると、その働き方によって手取り金額や年金の金額に影響します。パートタイムで働く場合には、厚生年金の適用の有無に注意して働き方を選びましょう。
 
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー


 

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