更新日: 2021.05.21 その他年金
年金だけで支払える?(2)老後の介護費はどれくらいかかる?
前回の「年金だけで支払える?(1)老後の医療費はどれくらいかかる?」に引き続き、公的年金で老後の介護費を支払うことができるのか検証していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
老後に受け取れる公的年金の額を再確認
国民年金の満額の支給額は、夫婦2人合わせて月額13万円程度です(令和2年度分)。厚生年金は収入に比例しますが、日本年金機構の試算では平均的な収入(賞与含む月額換算43.9万円)で40年間就業した夫と専業主婦の妻の場合、月額で約22万円(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)となっています。
前回と同様、夫婦2人の1ヶ月の年金収入として国民年金は約13万円、厚生年金は約22万円を基準に検証していきます。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
老後にかかる介護費の平均額は?
公益財団法人 生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年度)によると、老後の介護にかかる月々の平均額はおよそ7.8万円となっています。この数値だけ見れば「多少高いけど何とかなるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。気を付けていただきたいのは、この7.8万円というのはあくまで平均であるという点です。
実際に介護費用の分布では、月15万円以上かかった(かかっている)という層が15.8%と一番多いのです。次いで多いのが1万円から2万5000円未満の15.1%となっており、費用が個別の事情によって大きく異なることが想定されます。
なぜ介護費用に極端な差が出ているの?
介護費用に極端な差が出ている1つの理由として、介護を行う場所が挙げられます。在宅介護の場合は月々の介護費用の平均額が4.6万円となっているのに対して、介護施設を利用すると11.8万円と一気に2.5倍ほどに跳ね上がります。介護費用について考える際は平均よりも、どこで介護を行うかを念頭に置いた方がよさそうです。
介護には一時的な費用もかかる
介護には毎月かかるお金以外にも一時的な費用が必要となります。例えば、在宅介護をする場合に必要なバリアフリー工事の費用やベッドの購入代、介護施設へ入居する場合は入居時の初期費用などがその具体例です。一時的な費用の平均額は69万円と、かなり高額になっています。
公的年金だけで介護費用を支払うのは困難
介護費用の平均月額が7.8万円であると、公的年金だけで支払っていくのは現実的ではないでしょう。前回の「年金だけで支払える?(1)老後の医療費はどれくらいかかる?」で見たように、夫婦2人で生活するには毎月22万円程度が必要であると推計されているところ、国民年金は夫婦合わせて月額で約13万円、厚生年金では平均月額で22万円程度の支給になるからです。
一時的な費用が発生することも踏まえると、公的年金だけで介護費用まで支払っていくのは現実的ではないでしょう。
本当に医療費や介護費ってそこまで必要なの?
今回の記事や前回の記事を読まれた方の中には、「祖父母や両親は医療費も介護費もほとんどかからなかった」「自分は健康だし、将来の不安はないから大げさに感じる」という方もいらっしゃるでしょう。
実際、その指摘は間違いではありません。医療費や介護費をほとんど必要としないまま一生を終える方も一定数存在しています。
しかし、昨今の傾向として、多くの方が老後の医療費や介護費に大きな支出をしているというのもまた事実です。人生は何が起こるか分かりません。可能性が0ではない以上、少なくとも平均的な医療費や介護費相当額については生じるものとして備えをしておく方が無難でしょう。
医療費や介護費は現役世代から早めの準備を
医療費や介護費について余裕をもって老後を迎えるには、現役世代のできるだけ早いうちからの準備が必要です。毎月ある程度の貯蓄をして、その上で医療保険やiDeCo、つみたてNISAなど自身の考え方に合った方法で将来に向けて備えていきましょう。
年金だけで生活費や医療費、介護費の全てを賄おうとするのは現実的ではありません。それを意識し、毎月1万円や2万円など少額からでも将来への備えを始めていってください。それが10年20年と続けば大きな備えとなり、老後を支える柱の1つとなります。
出典
日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
公益財団法人 生命保険文化センター 日本人の平均寿命はどれくらい?
公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)
公益財団法人 生命保険文化センター 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年12月発行)
執筆者:柘植輝
行政書士