更新日: 2021.04.23 その他年金

通勤手当が減ると、年金が減る?

通勤手当が減ると、年金が減る?
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、会社員の働き方にも変化が生じています。
 
在宅勤務、テレワーク、サテライトオフィスの活用など、必ずしも通勤をしない、または通勤の回数が減少するケースも多くなっています。企業によっては、こうした状況を背景に通勤手当を定期券による支給から実費精算などに変更する動きが見られます。
 
今回は、このようなコロナ禍での変化が私たちにどのように影響してくるのか、その可能性について確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

通勤手当の取り扱いの変化

前述のとおり、企業によっては通勤手当の定期券による支給を廃止し、実費精算や回数券などでの支給に移行しているケースがあります。また、定期券で支給する場合の基準を以前よりも厳しくしているケースも多いようです。例えば、「在宅率〇%以上」、「1ヶ月当たり〇日以上出社」、「別途支給する在宅手当との選択制」などがあります。
 

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交通機関を利用した場合の通勤手当

電車やバスなどの交通機関を利用した場合の通勤手当は、1ヶ月当たり15万円を限度額として所得税等が非課税となります。国税庁のホームページでは、この場合に非課税の対象となる通勤手当は「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額」とされています。
 
少し分かりづらい表現となっていますが、つまり「最も経済的で合理的な経路による金額」として、通勤定期券の金額が想定されているということです。また、ほとんどの会社員の場合、実際の所得税等の計算においては通勤手当の額が非課税限度額内となっているため、定期券であれ、実費精算であれ、所得税等の額には影響はないことになります。
 
その一方で、社会保険料の算定基礎となる「報酬月額」は、通勤手当を加えて計算することとなっています。つまり、報酬月額には基本給をはじめ、通勤手当や残業手当(割増賃金)、住宅手当など、毎月支給されるものについては含めて計算します。この報酬月額の金額を基にグループ分けされたものが「標準報酬月額」です。
 
標準報酬月額は標準報酬月額表に当てはめて算定されますが、例えば、報酬月額が19万5000円以上21万円未満の場合には、標準報酬月額は20万円の等級(令和3年度版)となります。そして、この標準報酬月額を使って健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料の各人の保険料負担額が決定されることとなります。
 

通勤手当が減少した場合の影響

お勤めの企業の状況や各人の出社日数などの違いによって異なりますが、ここでは分かりやすく、コロナ禍での在宅勤務の奨励により出社日数が明らかに減少したケースを想定してみましょう。
 
この場合、通勤手当の支給額の減少のみならず、残業手当なども減少していることもあるでしょう。結果として、報酬月額が減少することで健康保険料や厚生年金保険料が減額される場合があります。
 
前述のとおり、健康保険料などの金額は標準報酬月額によって分類された「等級」によって算出されます。報酬月額が減少することで等級が下がれば、保険料の金額も減額されることになります。会社員一人ひとりから見れば、毎月支払う健康保険料などの金額が減額されることで、負担の軽減につながる要因となります。
 
別の見方をすると、将来、老齢厚生年金として受け取る年金額は、平均標準報酬月額を基に被保険者期間の月数と一定の比率を掛けて算出されます。そのため、報酬月額が慢性的に減少してしまうと、受け取ることができる年金額が減少する要因ともなるのです。
 
また、老齢厚生年金の額から算定される障害厚生年金や遺族厚生年金の額にも影響するほか、傷病手当金や出産手当金の金額にも影響が及びます。
 

まとめ

会社員を雇用する企業側からすれば、通勤手当を過剰に負担することなく、実質的な出社実績による支給とすることでコスト削減につながる可能性があります。会社員一人ひとりにとっては、それほど通勤手当にのみスポットを当ててナーバスになる必要はないと思いますが、将来受け取る年金額にも多少なりとも影響があるとの事実だけは知っておくべきでしょう。
 
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
日本年金機構 厚生年金保険料額表
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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