定年後も働くと年金が受け取れないことも。在職中も調整されない年金って?
配信日: 2021.06.11 更新日: 2021.09.10
ただ、ひとつ知っておきたいのが、老後にたくさん働くと年金がカットされる可能性があるということです。どんな仕組みなのか、カットされない年金はあるのか解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
長く働くなら「在職老齢年金」について知っておこう
「老後も働くと年金を減らされる」という話を聞いたことがあるかもしれません。それは、在職老齢年金という仕組みによるものです。
■在職老齢年金とは
60歳以降に厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取るとき、給与や賞与の金額や年金額に応じて、年金の一部または全額が支給停止になることを「在職老齢年金」といいます(※2)。
一度支給停止になった年金は、その後、収入が下がろうが退職しようが自分の手元に戻ってくることはありません。純粋に「カットされる」ということです。
■支給停止になるのはどんなとき?
60~64歳の方は、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合、65歳以降の方は月額47万円を超えているときは、この制度の対象です(法改正により、2022年4月からは60~64歳の方も月額47万円が基準に変わります)。
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在職中も調整されない年金とは?
老後に働いても、年金を減額されない場合もあります。例えば以下のような場合です。
■年金+給与の金額が一定額以下
先述のとおり、在職老齢年金の対象になるのは「月額28万円超」、もしくは「月額47万円超」の方です。その範囲内で働くぶんには、年金額が調整されることはありません。
■自営業やフリーランスとして働く
在職老齢年金は「厚生年金に加入しながら年金を受け取る人」、つまり会社員や公務員など雇用されて働いている方が対象です。国民年金(老齢基礎年金)は減額されません。
自営業やフリーランスなら、厚生年金には加入せず国民年金のみですので、いくら働いて収入を上げたとしても在職老齢年金の対象になることはありません。そのため、定年後は再雇用ではなく、あえてフリーランスとして今まで勤めた会社と契約するという選択をする方もいます。
まとめ:老後の働き方を考えるなら年金制度の知識も大切
年金の仕組みは複雑で「わかりにくい」と敬遠されがちなのですが、知っているか知らないかで毎月数万円の収入差につながる場合もあります。
どんなときにいくらもらえるのか、具体的に把握しておくことは老後の働き方や暮らし方を考えるうえでとても大切なことです。
もし、「自分の場合はどうなるのか正確に知りたい」という場合は、年金事務所の窓口に問い合わせたり、日本年金機構が運営している「ねんきんダイヤル(TEL:0570-05-1165)」で電話相談もできますよ。
後悔なく思う存分、理想の老後生活を送れるよう、お金と仕事の面もうまく調整して準備していきたいですね。
(※1)
総務省統計局「2.高齢者の就業」
総務省統計局「3.高齢者の就業」
(※2)
日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」
(出典)
日本年金機構「在職老齢年金の支給停止の仕組み ~働きながら年金を受けるときの注意事項~」
日本年金機構「電話での年金相談窓口」
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」/(3)在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表