更新日: 2021.06.29 その他年金

在職中に年金を請求したら、受給額はどれくらい減る?

在職中に年金を請求したら、受給額はどれくらい減る?
年金は、リタイアしたら受給できると思っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。年金制度にはいくつかのバリエーションがあり、たとえ在職期間中であっても受給できます。
 
ただし、在職中に年金を受給するためには一定のルールがあります。いったいどのようなルールがあるのか、受給額はどうなるのでしょうか?
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

https://paradisewave.jimdo.com/

在職中でも年金をもらうとどうなる?

在職中に受け取れる年金の制度は、在職老齢年金制度といいます。働いて得られる収入にプラスして年金も受け取れるなら、何だか得するように思うかもしれません。しかし、実際は、そううまい話ではありません。
 
在職老齢年金制度では、70歳未満で会社に就職して厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上でも厚生年金保険の適用事業所で働くときには、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部もしくは全額が支給停止となる場合があります。
 
支給停止になる可能性があるのは「老齢厚生年金」のみですので、「老齢基礎年金」はいくら収入があっても支給停止にはなりません。とはいえ、本来、受給できる年金額が減ってしまうことがあり得るのです。
 
この制度は、65歳まで(65歳未満)の在職老齢年金と65歳以降の在職老齢年金の2つに区分されています。
 

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65歳までに在職老齢年金を受け取る場合

65歳未満であっても、働いているケースは少なくないでしょう。この場合、厚生年金の被保険者となっていると、受給している老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となることがあります。反対に、働いていても厚生年金の被保険者でなければ、対象にはならないことになります。
 
年金の支給が停止されるケースは3つあります。
 
(1)在職中であっても、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が28万円に達するまでは年金の全額を支給します。つまり、28万円未満であれば、年金は全額支給されます。
 
(2)総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が28万円を上回ると、総報酬月額相当額の増加に対して、年金額を停止することになります。その場合の計算式は、

基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

です。
 
(3)総報酬月額相当額が47万円を超えると、さらに総報酬月額相当額が増加した分だけ年金を支給停止します。このときの計算のベースとなる28万円や47万円は、それぞれ「支給停止調整開始額」および「支給停止調整変更額」といい、賃金や物価の変更に応じて、毎年見直されています。
 
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合は全額支給ですが、それ以外の場合はどうなるのでしょうか?
 

・総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合

基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

 

・総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合

基本月額-総報酬月額相当額÷2

 

・総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合

基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

 

・総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合

基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

 
総報酬月額相当額によって、計算式は違ってきます。自分の場合はどうなのるか、確認してみましょう。
 
また、2022年4月から60歳から64歳までの場合、基本月額+総報酬月額相当額が47万円以下なら、支給停止はなくなることになります。2022年3月までの働き方と2022年4月からの働き方を考えておく必要はありますね。
 
(参考:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」(※1)、一部抜粋・引用:生命保険文化センター「在職老齢年金について知りたい!」(※2)、日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」(※3))
 

65歳以上で在職老齢年金を受け取る場合

65歳以上70歳未満で厚生年金保険の被保険者になると、65歳から支給される老齢厚生年金は、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて、年金額が支給停止となる場合があります。
 
また、平成19年4月以降に70歳に達していると、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務しているときには、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、65歳以上の方と同様の在職中による支給停止が行われます。
 
基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合には、全額支給されます。一方、基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合には、下記の計算式で算出した金額が支給されます。
 
その場合の計算式は、

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

です。
 
在職老齢年金を受給している人が退職した場合はどうなるのでしょうか?
 
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給している人の年齢が70歳未満の場合、退職して1ヶ月を経過したときには、退職した翌月分の年金額から見直されます。この場合には、年金額の一部または全部支給停止がなくなるため、本来受給できる全額が支給されることになります。
 
あわせて、年金額に反映されていない退職までの厚生年金に加入していた期間を追加して、年金額の再計算が行われます。
 
(一部抜粋・引用:生命保険文化センター「在職老齢年金について知りたい!」(※2)、日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」(※4))
 
在職老齢年金は年金が減ることがあり、損になることがあると考える人もいらっしゃると思います。ただし、仕事そのものが生きがいとして感じられるのなら、お金のことばかりを気にするのではなく、生きがいを優先しても良いかもしれません。
 
とはいえ、働き方は調整したほうは良いかもしれませんので、慎重に検討しましょう。
 
出典
(※1)厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
(※2)生命保険文化センター「在職老齢年金について知りたい!」
(※3)日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」
(※4)日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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