更新日: 2021.09.08 年金

手続きを忘れると年金を受け取れないことも? 年金の時効って一体なに

執筆者 : 酒井 乙

手続きを忘れると年金を受け取れないことも? 年金の時効って一体なに
原則65歳から受給できる老齢年金。例えば、国民年金であれば保険料納付済期間10年以上など、受給要件を満たせば一生涯年金を受け取ることができます。ただし、年金は国が自動的に振り込んでくれるわけではありません。受給をするための請求手続きが必要です。 
 
では、手続きを忘れたらどうなるのでしょうか? 実は年金には時効があり、年金が受け取れないこともあるので要注意です。実例や注意点をまとめました。
 
酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

権利発生から5年を過ぎた分の年金は、時効で消滅することも

年金を受ける権利は、権利が発生してから5年で消滅します(※1)。この「権利が発生してから」とは、いわゆる年金の支給要件を満たした時点であり、例えば老齢年金なら被保険者が65歳に達したとき、遺族年金なら被保険者が死亡したときなどがそれにあたります。
 
しかし実際には、5年経過したからといって年金を受ける権利自体が自動的に消滅してしまうわけではなく(※2)、「権利が発生した年金を受け取る権利」に対して5年の時効が適用されています。
 
つまり、5年経過によって年金自体がなくなってしまうわけではなく、5年分の年金は受け取れるけれど、それ以前の年金が受け取れない可能性がある、ということになります。では、次に具体例を見ていきましょう。 
 

ケース1 権利が発生した時点で請求せず、一部の年金が消滅

<例>

昭和36年生まれのYさん(女性)は、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができる62歳の誕生日を迎えました。しかし、年金は「65歳からもらえるもの」と思い込んでいたYさんは、誕生日の3ヶ月前に年金事務所から送られてきた請求書を「65歳からもらえる年金の繰り上げ手続き」と勘違いして、そのまま放置してしまいました。
 
それから7年たち、69歳になって遺族年金の請求のために年金事務所へ行ったところ、それが「年金繰り上げ」の手続きとは別であることに初めて気が付きました。

 
この場合、年金はどうなってしまうのでしょうか?
 
Yさんは62歳で年金を受ける権利があったにも関わらず、それから7年がたっています。5年の時効が適用されれば、2年分の年金は受け取ることができないことになります。
 
なお、「特別支給の老齢厚生年金」とは、男性なら昭和36年4月1日以前生まれ、女性では昭和41年4月1日以前生まれであるといったいくつかの要件を満たす方が対象となる年金です。65歳からもらえる老齢年金とは別ものですので要注意です。
 

ケース2 「一時金」が出ることに気づかず権利が消滅

次のケースは、要件が足りず「年金」は受け取ることができないものの、他の要件を満たせば「一時金」を受ける権利があったケースです。しかし、そのことを知らずに時効がきてしまいました。
 

<例>

Iさん(50歳、女性)は、自営業だった夫から生前、「俺は年金保険料をまともに払ってなかったから、年金は期待できない」と繰り返し言われていました。遺族年金が出なくても「死亡一時金」が出る可能性があることを知らなかったIさんは、夫の死後、「どうせ出ないのだから」とそれ以降、年金の手続きをまったく行いませんでした。 

 
Iさんのケースのように、亡くなった家族が年金保険料をしっかり払っていなくても、遺族年金の代わりに「死亡一時金」が支給されることがあります。
 
ただし、死亡一時金の時効は年金より短く2年です。つまり、死亡一時金を受け取るには、亡くなってから2年以内に手続きをしなければなりません。
 
なお、「死亡一時金」の受給要件は、亡くなった方が「国民年金第1号被保険者」(自営業者、学生、無職の方など)であること、保険料納付月数が36ヶ月以上などです。該当すれば、保険料を納めた月数によって、12万円~32万円を受け取ることができます。
 

ケース3 時効が適用されない場合

ここまでは請求者が勘違いなどで請求しなかったケースを取り上げました。それでは、年金を受け取ることができなかった原因が自分ではなく、国や年金事務所にある場合はどうでしょうか。
 
例えば、2007年に判明したいわゆる旧社会保険庁の「年金記録問題」のように、年金記録自体に間違いがあり、その記録を元に本来の額より年金が少なく支払われていた場合です。この場合は、2007年に施行された年金時効特例法によって、過去の年金が5年以上にさかのぼって修正されても、時効が適用されないこととされています(※3)。
 

手続きの必要性や時効を自分で判断しないことが大切

それでは、年金が時効となって消滅させないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
 
それには自分の思い込みは止めて、少しでも不明な点は遠慮せずに市区町村の年金課や年金事務所に電話で、または直接訪問して確認することをお勧めします。
 
前述のYさんやIさんは、一般的な情報や家族の言葉から手続きは必要ないと推測してしまいました。しかし、年金は複雑です。自分で判断せず、年金の手続きは本当に必要ないのかどうか、いつするべきなのかなど、しっかり確認するようにしてください。
 
(※1)国民年金法第102条1項、および厚生年金保険法第92条1項
(※2)日本年金機構「年金の時効/基本権」
(前略)ただし、やむを得ない事情により、時効完成前に請求をすることができなかった場合は、その理由を書面で申し立てていただくことにより、基本権を時効消滅させない取扱いを行っています。(後略)
(※3)日本年金機構「年金時効特例法について」
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。