更新日: 2021.09.30 その他年金
35歳、45歳、59歳の人に届く「ねんきん定期便」の封書。記載内容に誤りがあることがあるって本当?
節目に届くねんきん定期便では、これまでの加入記録すべてをチェックできることから、実際と異なる内容が記載されている部分を見つけることもできます。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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なぜ実績と異なる事実が記載されている?
平成9年以前は、公的年金制度ごとに番号管理を行っていましたが、平成9年以降、1人に1つの基礎年金番号を付与し、一元管理を行うこととなりました。その際に、何らかの理由で記録が統一されないというケースが起こりました。そのため、一部の人の記録においては、今でも実際と異なる事実がコンピューター上に登録されているという可能性があります。
(出典:日本年金機構「年金記録問題とは?」(※1))
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正しい内容が記載されているかどうかのチェックポイント
節目に送られてくるねんきん定期便には、これまでのすべての加入記録が記載されています。早い段階でチェックを行い、間違っている内容が記載されている場合は、訂正してもらう必要があります。チェックする際には、以下のポイントを特に重視するようにしましょう。
1.姓が変わった場合にそれがきちんと反映されているか
2.グループ企業内で出向や転勤を繰り返していた場合、その事実がきちんと反映されているか。
3.事情があり、本名と異なる名前で働いていた時期について正しく記録されているか
4.保険外交員もしくは期間工として働いていた時期について正しく記録されているか
5.試用期間中に退職した事実はないか、あればそれについて正しく記録されているか
6.賞与を受け取っていたはずなのに、それが記載されていない事実はないか(平成15年4月以降の賞与に限る)
7.記載されている標準報酬月額が、当時受け取っていた給与と大きく異なる事実はないか
8.転勤の都度、年金手帳が発行された事実はないか
1.国民年金保険料を納付していたにもかかわらず、未納扱いとなっていないか
2.学生であった時に国民年金に加入していた時期についてはどうなっているか
3.夫もしくは妻の扶養家族であったが、国民年金に加入していた時期の扱いはどうなっているか
間違った実績が見つかった場合の対処法
ねんきん定期便の内容をチェックし、間違った実績が見つかった場合はそれを訂正する手続きを行う必要があります。35歳、45歳、59歳の節目に届くねんきん定期便であれば、「年金加入記録回答票」が同封されているはずですので、それに記入し、返送するようにしてください。日本年金機構がそれを受け取った後に、調査および確認を行うこととなります。
年金記録の回復状況
2021年6月時点での年金記録の回復状況で、ねんきん特別便により年金記録が回復した方はのべ1030万人となっており、まだかなりの数の方の年金記録に実績との相違がみられることが分かります。そして、記録を訂正した結果、年金額の増えた方については約397万人に達し、生涯額の総額は2.8兆円と大きな規模になっています。
しかし、今なお、国民年金特殊台帳とコンピューターとの照合結果が一致しない件数は約30万件にも達することから、多くの人の年金記録が実際と異なる事実で登録されている実情がうかがえます。
(出典:日本年金機構「「年金記録問題への取組状況」等の取りまとめ」(※2))
年金記録の改訂請求
年金に加入していた期間や保険料の納付状況など、年金記録が事実と異なると、将来受け取る年金額が少なくなってしまうことがあります。そのため、年金記録が事実と異なると思われる方は、年金記録の訂正を国に請求することができ、これを年金記録の「訂正請求」といいます。
●年金に加入している(加入していた)本人
●加入していた方が死亡している場合はその遺族
■改訂請求の対象となる期間
国民年金・厚生年金保険の被保険者であった期間、厚生年金保険に統合された旧船員保険の被保険者期間、旧農林共済組合などの共済組合の組合員期間となります。
●年金記録訂正請求書
●同意書
●請求の概要
●請求内容に関する概要が分かる資料
近くの年金事務所に持参するか郵送でも請求を行うことができます。
(出典:厚生労働省「年金記録の訂正手続のあらまし」(※3))
まとめ
「将来、どうせ年金はもらえないから」というご相談を受けることがあります。確かに今後受け取れる年金額を知ったとしても、実際の受取時期にその年金額がどのくらいの価値になっているのかは想像できません。しかし、老後の収入の1つとして多くの人が年金に頼っていることも事実です。
「将来年金はもらえないだろう」という想像でチェックをおろそかにするのではなく、保険料を納めた分についてはきちんと受給できるように準備しておくことも大切です。そのうえで、将来受け取る年金額が不足すると感じた場合は、別途貯蓄や運用などで資産を増やしていくことを考えていきましょう。
出典
(※1)日本年金機構「年金記録問題とは?」
(※2)日本年金機構「年金記録問題についてのこれまでの取組状況 (主要データ)令和 3 年 8 月」
(※3)厚生労働省「年金記録の訂正手続のあらまし」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員