更新日: 2021.10.06 その他年金
年金にまつわる年数をもう一度整理(2)「20年」に関するもの
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
配偶者がいることでの加算には20年が関係
老齢年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があることは(1)でも取り上げました。老齢年金には、厚生年金被保険者期間が20年あるかどうかで加算の有無が変わってくる加算制度があり、具体的には老齢厚生年金に加算される加給年金、老齢基礎年金に加算される振替加算があります。
まず、加給年金は、原則、厚生年金被保険者期間が20年以上あって老齢厚生年金を受給し始める際に、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳年度末まで(一定の障害がある場合は20歳未満)の子がいる場合に加算がされます。
配偶者加給年金は39万500円(特別加算額込み)、子の加給年金は1人につき22万4700円(3人目以降は1人につき7万4900円)です(いずれも2021年度の年額)。
ただし、その配偶者自身に厚生年金加入が20年あって60歳台前半で特別支給の老齢厚生年金を受けられる場合(※2022年4月より原則当該年金が全額停止の場合も含む)、あるいは障害年金を受けられる場合は配偶者加給年金の加算がされなくなります(支給停止)。
振替加算は、厚生年金加入20年以上で老齢厚生年金を受けていた配偶者に生計を維持されていた、厚生年金加入20年未満の人の老齢基礎年金に加算されます。
ただし、対象となるのは1926年4月2日~1966年4月1日生まれの人で、対象者には生年月日に応じて22万4700円~1万5055円(2021年度の年額)が加算されます。
夫婦のうち、もし、年上の夫が厚生年金加入20年以上、年下の妻が厚生年金加入20年未満であれば、夫の65歳から妻の65歳まで夫の老齢厚生年金に加給年金が加算され、妻が65歳になると、妻の老齢基礎年金に振替加算が加算されます(【図表1】)。
一方、夫が年下で厚生年金加入20年以上、年上の妻が20年未満であれば、夫に加給年金は加算されず、夫の65歳以降に妻に振替加算が加算されます(【図表2】)。
夫だけでなく、妻にも20年以上の厚生年金加入があると、妻に振替加算は加算されません。要件を満たせば、【図表1】と【図表2】の夫と妻が逆の場合でも対象となりますが、「厚生年金被保険者期間として20年あるか」がポイントです。
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厚生年金加入20年は遺族年金にも関係
20年という年数は、老齢年金だけでなく遺族年金の加算制度にも影響があります。夫を亡くした妻が遺族厚生年金を受ける場合の中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算があります。
中高齢寡婦加算は40歳以上65歳未満の妻に年間58万5700円加算され、経過的寡婦加算は65歳以上で1956年4月1日以前生まれの妻が対象で、生年月日に応じた額(58万5700円~1万9547円)が加算されます(いずれも2021年度の年額)。
老齢厚生年金の受給権者やその受給資格期間を満たした人(いずれも受給資格期間が原則25年以上)が死亡したことによって支給される遺族厚生年金の場合(「長期要件」による場合)では、中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算の加算には死亡した人に厚生年金被保険者としての期間が20年(原則)必要です。
一方、若くして在職中(厚生年金被保険者期間中)に死亡した場合など(「短期要件」による場合)は、当該期間が20年未満でも加算されますので、死亡した時の条件しだいでは加算の有無が変わることになるでしょう。
いずれにしても今回取り上げた「20年」という年数は、家族、特に配偶者がいる場合に受給額に影響が出ることになります。家族がいる場合は厚生年金被保険者としての加入年数がどれくらいあるか確認しておきたいところです。
出典
国民年金法
厚生年金保険法
厚生労働省ホームページ
国民年金機構ホームページ
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー